アメリカの民主党は「女性の党」になった。だから去年の大統領選挙にも勝てなかった――コラムニストのトーマス・エドサルさんが書いています。
女性の党は、リベラルということか。女性はもともとリベラルか、じゃあ男は何なのか。あれこれ考えてしまいます(Democrats Have ‘a Massive Blind Spot When It Comes to Male Issues’ By Thomas B. Edsall. July 8, 2025. The New York Times)。
去年の大統領選挙で民主党のカマラ・ハリス候補が敗れたのは、人種や所得など、すべての階層で男性票が共和党に流れたからだと、エドサルさんはいいます。
大ざっぱにいうなら、女はハリス、男はトランプだった。
いやそうではない。女は民主党、男は共和党。これが今回の論点です。

世論調査を行うカタリスト社は、政党間のジェンダー・ギャップは広がっていると分析しています。
女性はもともと民主党支持が多く、2020年の大統領選挙では民主党候補をを56%が支持した。2024年も民主党候補をを55%が支持しています。けれど男性は2020年、48%が民主党を支持したのに対し、去年の民主党支持は42%に減っている。
ことに若者の変化が目立ち、黒人の男性若年層では民主党支持が85%から75%に減っているとカタリスト社はいいます。
なぜ減ったのか。アメリカ男性研究所(American Institute for Boys and Men)のリチャード・リーブス代表はいいます。
「民主党が事実上、女性の党だからだ」
民主党リベラル派はことあるごとに、「男性性(マスキュリニティ)の毒」だの「父権主義」だの「説教する男たち」だの、男が「男であること」を批判してきました。けれど共和党は「男性性の毒」なんて決していわない。市民団体GWC(Girls Who Code)の代表もいいます。
「男ぬきで民主主義は達成できない。とろこがいま起きているのは、男の排除だ」

民主党は1960年代以降、女性やマイノリティ、人種の平等を求め、周辺化された人びとの公正な社会参加を進めまてきました。けれどそれは、白人多数派だけでなく、多くの男性にとっても、従来の安定と伝統を揺るがす動きでした。
社会の大きな変動と、これに対する反動。どの社会でも、いつでも起きている現象です。そういう「大きな流れ」は止まらないと、これまでのアメリカだったらいえた。けれど、もうそうではない。トランプ的な、男性性、全体性の毒は強まる一方です。
日本もまた、この毒が強まっている。乱立する政党が外国人排除を唱える参院選を見ながら、「外国人」はいつでも「別のマイノリティ」に置き換わると危惧します。
(2025年7月16日)