力のあるジャーナリストは、こういう仕事をするのかと感心しました。
ロンドン在住のフリー・ジャーナリスト、サービラ・ショードリさんは、使い捨ておむつが地球環境を汚染していると告発しています。
え?
いまさらそんなこといわれてもな。使い捨ておむつは、もうやめられないでしょ。そこをあえて、あらためて、問いかけます(Throwaway Plastic Has Corrupted Us. By Saabira Chaudhuri. Sept. 6, 2025. The New York Times)。

ショードリさんは近著で指摘します。
1957年、アメリカの乳児は1歳半までに92%がトイレトレーニングを終え、自分でトイレに行けるようになった。40年後、それは4%になった。布おむつを使い捨ておむつにした親たちが、トイレトレーニングを急がくなったから。
使い捨ておむつは環境に膨大な負荷をかけている。2011年から18年に海底に堆積したゴミのうち、もっとも多い25品目のなかに使い捨ておむつが入っていた。陸上では40品目のうちのひとつ。アメリカでは年間180億個の使い捨ておむつが捨てられている。

(”大企業が私たちをプラスチック依存にした”)
紙おむつともいわれる使い捨ておむつには、大量のプラスチックがあります。1960年代、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社がパンパースとして製品化しました。
当時、布おむつは肌にこすれて赤ちゃんを傷つけ、感染をもたらすといわれたけれど、背後にあったのはP&G社が資金を提供した研究だった。有名な小児科医がテレビ番組でトイレトレーニングを急がないようアドバイスしたけれど、P&G社から金をもらっていた。プラスチックではなく「紙」おむつというのも、戦略のひとつだったのでしょうか。

プラスチックが爆発的に広がり生活のすべてを変えたのは、消費者が求めたから。またそれは、消費者がプラスチックに依存するよう操作した企業の成果でもあったと、ショードリさんはいいます。
「使い捨てプラスチックはやめられないものではない。やめられなくさせたのは企業の戦略でもあった。われわれはそうではない新しい方向に向かうことができる」
フランスのスーパーで野菜や果物のプラスチック包装をやめたり、デンマークの一部でカフェが使い捨てカップをやめた動きに、新しい方向を見ることができる。
とはいえ、紙おむつをやめるのはむずかしい。いまの若い親に、紙をやめて布にもどれとはなかなかいえません。十代の子にスマホをやめろというのとおなじです。
ぼくは古い世代だから、できないことではないと経験上知っている。ただ、使い捨てをやめようとしても、母親の負担が強まるだけになってはいけないし、親の努力だけに期待するのも無理でしょう。
この際だれか、“使いまわし紙おむつ”なんてものを作らないだろうか。
(2025年9月10日)