イギリスで、タコが豊漁です。
いわずとしれた温暖化現象でしょう。北海道でブリが豊漁なように。世界の海が様変わりしている。あのイギリス人がどうやってタコを食べるんだろうか(Octopuses Invade the English Coast, ‘Eating Anything in Their Path.’ Sept. 29, 2025. The New York Times)。
タコがブームになっているのは、イギリスの南岸一帯です。もともとこのあたりは名物「ドーバー・ソウル」、ドーバー海峡のシタビラメの産地だった。それがことしはヒラメではなく、タコが大量にかかるようになった。
1キロ7ポンド(1400円)の値がつき、漁師ひとりあたり週200万円もの水揚げになることもある。漁師町は活況にわいています。

(Credit: Matthew_Hartley, Openverse)
デボン州ブリクサムの魚市場でせりを担当するバリー・ヤングさんは、1月から8月にかけ1万2千トンのタコが売れたといいます。最高は1日48トン。
競り落とされたタコはスペインやポルトガルに向かう。そのほうが高く売れるから。
もともとイギリスにはタコを食べる習慣がない。むかしからタコやイカを食べてきたイベリア半島でこそ重宝されるということでしょう。
地元でも、タコを食べないわけではない。
伝統のフィッシュ・アンド・チップスとともにタコが並んでいる。地元レストランのオーナー、ロバート・シモネッティさんは、タコの調理法をこう説明しています。
タコを一晩塩に漬け、その後タマネギと月桂樹を入れた鍋で2時間ゆでる。ゆっくり常温にもどしたら翌日以降、炭火で焼くか炒めて出す。
「下ごしらえがたいへんだ。墨だらけになるから。でも味はロブスターなみだよ」
フムス(ひよこ豆とオリーブ油のペースト)とともに出して好評だったそうです。
とはいえ、やっぱり刺し身や酢ダコは食べないんですね。もったいない。

タコはいまや高級品です。
世界的にタコの漁獲量が落ちている。おまけに中国を中心に、タコの味に目覚めた国が多く、品薄になった。日本でも近海ではとれないから大部分を西アフリカから輸入している。タコが高くなり、タコ抜きのタコ焼きが増えているんじゃないでしょうか。
イギリスで大量にとれるんだったら、日本の商社が買いつけてくれないだろうか。
スペインが買ってるってことは、日本が競り負けてるってことか。
いずれタコが高くなりすぎて、ぼくらは「カニかま」ならぬ「タコかま」を食べるようになるかもしれません。イギリスがうらやましい。
(2025年10月10日)