オンラインによるうつ病の治療が、一定の効果をあげています。
精神科の医者ではなく、「セラピスト」によるカウンセリングが中心だから限界もあるけれど、利用者は増えている。専門家は、精神科の間口が広がると肯定的に見ています(Study Finds Evidence That Text-Based Therapy Eases Depression. By Ellen Barry. Oct. 30, 2025. The New York Times)。
オンラインでうつ病や不安症など、メンタルな相談に対応するサービスを提供しているのは、「ベターヘルプ」や「トークスペース」などというサイトです。
これらのサイトに、精神的、心理的な問題をテキスト・メッセージで送ると、専門のセラピストが答えてくれる。

たとえば重要なプレゼンテーションの前に、「頭が真っ白になりそうで不安だ」と訴えると、セラピストから返事が来る。「ナーバスになっているなら、それをことばにしてみましょう」。「上司が私のことをバカにしている」のが心配がなら、「どんなときにそう思うか具体的に書き出してみよう」。
テキスト・メッセージによるセラピストの相談は、この10年、精神保健の分野でもっとも人気が出ているサービスだといいます。
このサービスが、軽度から中度のうつ病の治療に役立っていると、ワシントン大学のパトリシア・アリーン教授がアメリカ医学界誌(JAMA)オンライン版に発表しました。
アリーン教授は850人のうつ病患者に、オンラインサービスを12週間使ってもらいました。サービスを使った人は使わなかった人にくらべ、明らかに治療効果があったといいます。正確さには欠けるけれど、おおまかな傾向としてオンラインサービスは有効といえる調査でした。

精神科のオンラインでの対応は、コロナ禍で一気に広がっています。
かつてオンライン診療を受ける人は全人口の3~4%だったのが、2021年には2倍以上になりました。その先に、今日のテキスト・メッセージによるサービスがあります。
精神科の入口が広がりました。
オレゴン大学のジェーン・ウー博士は、オンラインサービスは「段階的ケア・モデルに収まる」といっている。メンタルな問題も、オンラインなら入りやすい。そこから必要に応じて段階的に専門的なサービスや治療に進めばいいということでしょう。
先日、精神科の患者家族と話をすることがあったけれど、いまだに病気を隠す人が多いと聞きました。そもそも精神科にかからない人も多いから、入口はできるだけ広げておいたほうがいい。そのためにも、オンラインでのサービスが日本でも広がるといいのですが。
(2025年11月10日)
