オレゴン州のクラマス川にサケが帰ってきました。
川にかかっていたダム4か所をすべて破壊し、撤去したからです。川が通れるようになり、さっそくサケがもどってきました。
あと何年かしたら、クラマス川は豊穣なサケの川として、100年前の姿をとりもどすでしょう(A River Restoration in Oregon Gets Fast Results: The Salmon Swam Right Back. Oct. 29, 2025. The New York Times)。
このニュースを調べていたら、ネット上で古い写真を見つけました。
クラマス川の河口で、人びとがサケを釣っている風景です。

(1950年代か。Credit: Jasperdo, Openverse)
これは写真というより、絵葉書を写真に撮ってネット上に公開したものでした。絵葉書の消印は1957年9月5日だというから、写っている光景はたぶん1950年代です。
こんなにもたくさんの人がサケを釣っていることに驚きます。おそらく産卵のため、クラマス川の河口にサケの大群が殺到したのでしょう。サケといっても最大級のチヌーク・サーモン、日本でいえばキング・サーモンです。それを地元民が大挙して集まり釣っている。
その後、この風景はなくなりました。
開発が進んでクラマス川の4か所にダムが作られ、川が農業用水に使われるようになって、サケが通れなくなったからです。

そのダムを撤去しようという運動が、流域のオレゴン州とカリフォルニア州で何十年もつづいてきました。中心になったのはこの地域の先住民、クラマス族やユローク族、カルーク族といった部族や、彼らを支援する環境活動家たちです。
こうした運動に応え、オレゴン州政府は去年9月までに4か所のダムをすべて破壊、撤去しました。ほとんど同時に、何尾かのサケが遡上をはじめたといいます。
ことしは10月末までに140尾のサケが遡上しました。この分だと、数年後のクラマス川は川面が波立つほどサケが遡上する豊穣の川となるでしょう。
先住民、クラマス族のウィリアム・レイ首長はいいます。
「さいわいというべきか、無念というべきか」
サケは、何千年にもわたって自分たちの命を支え、文化の柱だった。それが失われ、回復までにこれほどの年月がかかったことことは無念だ。けれど、もとにもどることはよろこびたい。
日本ではアイヌ民族がサケをとる権利を奪われたままです。ただただ無念でしょう。
クラマス川の古い絵葉書をよく見ると、釣りをしているのは白人ばかりです。このとき、サケを奪われた先住民はどこでどうしていたのでしょうか。
(2025年11月28日)
