AIのミトス

 新しいタイプのAIが人類をおびやしている。
 そんなことをいわれても驚きはしない。けれどニューヨーク・タイムズのトーマス・フリードマンさんがそういうのなら、ほんとかもしれないと思います。
 新しいAIが暴走しないよう、食いとめていられる時間はそう長くないかもしれない(Anthropic’s Restraint Is a Terrifying Warning Sign. By Thomas L. Friedman. April 7, 2026. The New York Times)。

 問題の新AIは、最先端AI企業、アンソロピック社が開発した「ミトス」(Claude Mythos Preview)です。
 チャットGPTなどと同類の大規模言語モデルですが、このミトス、一般公開されていない。非公開版がグーグルやアップルなど40社に提示されているだけです。
 なぜ公開しないのか。
 それは、公開して悪人が使えば世界のコンピュータ・システムが大混乱におちいるかもしれないから。

 ミトスは、コンピュータのソフトウェアを作成するソフトとして開発されました。AIの大規模言語モデルで、巨大で複雜なシステムをつくりあげる能力がある。
 そのミトスに、開発段階で法外な副産物がみつかりました。
 ミトスはシステムをつくるだけでなく、既存のシステムを解明できる。この力で、いまある汎用基本ソフトやブラウザー、金融や軍事などすべてのシステムの欠点や脆弱性を見いだすことができる。世界中のコンピュータ・システムに侵入し、乗っ取る潜在力を持つ「超ハッキング・ソフト」でもあるのです。

 そんな危ないAIを公開することはできない。
 アンソロピック社はミトスを非公開にしたけれど、ほかの企業がおなじようなAIを開発するのは時間の問題でしょう。中国もすでに中国版のミトスを持っているかもしれない。

 で、どうするか。
 専門家に取材したフリードマンさんはこういいます。
 ミトスを非公開のままにし、とりあえず時間かせぎをする。その間に、すべてのシステムの欠陥や脆弱性を把握し、ハッカーやテロリストの攻撃に防衛策を講じる。
 そのうえで、これだけの規模の問題は一国では解決できないから、アメリカと中国が協力し、AIで相互の安全保障を確保する枠組みをつくるべきだとフリードマンさんはいいます。来たるべき米中首脳会談はいいチャンスでもある。
 いまのアメリカに、それだけの理性があるかどうかがまず問題ですが。
(2026年4月15日)