ゴキブリ党

 インドでゴキブリ党が結成され、急速に伸びている。
 ゴキブリの政党――もちろんパロディです。このパロディをはじめたインターネット・サイトはたいへんな人気だったけれど、すぐに閉鎖されてしまった。当局があまりに強い「ゴキブリの政治力」を恐れたためといわれる。
 ゴキブリ党は、いったい何をしたのか(Parody Cockroach Janta political party’s rise reflects youth anger in India. 21 May 2026. Associated Press / The Guardian)。

「ゴキブリ人民党」のロゴ
BBCが5月23日ニュースで使用した画像

 ことの発端は、最高裁長官の発言でした。インド最高裁のスリヤ・カント長官が、最近の若者についていったそうです。
「就職もせず何の仕事もできない、ゴキブリのような若者たちがいる」
 彼らはネットやメディアを使って「だれでも攻撃する」とも。
 長官はのちほど、あれは若者一般をいったのではなく不正を働くものについていったことだと訂正した。けれど「若者ゴキブリ」発言は燎原の火と広がりました。

 直後の5月16日、ネット上に「ゴキブリ人民党」が現れています。
 おれたちゴキブリ、仕事なく怠惰でネット中毒。そういうおれたちが政治を変えるぜ。インドは失業率が高く物価もバカ高く、汚職と選挙の不正がはびこり、政府とメディアが癒着しているし裁判所は行政のいいなり。もうがまんできない。
 パロディは爆発的に広がり、5日後には1500万人のフォロワーがつきました。
 モディ首相のインド人民党はフォロワー880万人だから、その2倍近くの大人気です。

「ゴキブリ人民党」サイトの映像
「同党作成のAI画像」としてBBCが5月23日に使用した画像

 ゴキブリ党「創設者」のアブジート・ディプケさんは、アメリカのボストン大学で政治コミュニケーションを学んでいる。インドの汚職摘発に取り組む政治運動にも参加したことがあります。
 だからでしょう。ゴキブリ党にはただのパロディではない力がある。AP通信は、これは南アジアで広がっている政治潮流の一部だと指摘しました。スリランカ、バングラデシュ、最近ではラッパーが政権を取ったネパールでも、若者が古い政治体制を倒している。インドでもおなじような動きが起きているのではないか。

 ディプケさんは、政府は若者の声を聞こうとしないと批判します。だからゴキブリ党が躍進するし、ネットで禁止されてもすぐ新しいサイトが立ちあがる。
「これはネット上でつづくだろう、私たちは求められればネットから現実に降りてゆく」
 場合によったら、街頭にだって出ていきますよ。
「ゴキブリをなくすなんて、できるわけがない」
 なめたらあかん、ゴキブリのしぶとさ。
(2026年5月25日)