イヌがクマを撃退したという話を、ときどき聞きます。
いいぞイヌ、といいたくなる「美談」です。でもそういうイヌは少数派で、飼い主を助けないイヌもいる。それどころかクマを刺激し、飼い主に悲劇をもたらすイヌもいます。
イヌにあまり期待してはいけません(Dogs Will Fight Bears. But Not Because of the Reason You Might Think. Sept. 27, 2026. The New York Times)。
クマとイヌが出会うとどうなるかを研究したのは、ブリガムヤング大学のクマ専門家、トム・スミス教授です。「野生動物管理」誌に論文を掲載しました。

教授は、イヌを連れている人がクマと出会うとどうなるかを、過去100年あまりに北米で起きた事例で調べています。信頼できる記録が残っていたのは326例でした。
そしてわかったのは、全例中54%で、クマではなくイヌが「事件」を起こしていたとみられることです。
山のなかでイヌがクマをみつけ、吠えついたり、刺激したりして「ヤブから追い出す」形となり、その結果飼い主がクマに襲われている。
イヌを連れていると、むしろ危険なこともあるということです。

そのほかにわかったことは;
・全例で170人が負傷し5人が死亡している。けれど連れていたイヌは人間の10倍、56匹が死亡している。
・イヌがクマの存在を飼い主に警告した例は9%しかなかった。
・飼い主が襲われても、36%のイヌは飼い主を助けようとしなかった。
・102人がクマに襲われているイヌを助けようとして、半数近くの42人が重軽傷を負っている。
・クマ撃退スプレーなどを持っていると、負傷率は下がり安全性が増す。
・多人数で行動しているとクマに襲われにくい。しかしおなじ多人数でも、イヌを連れている場合クマに襲われる率は倍増するとみられる。

ここから読み取れるのは、クマが出没する地ではイヌを連れていない方がいい、連れていくときもリードにつないでいたほうがいいということです。
ただしこれは一般的なイヌの場合で、クマと戦う訓練を受けた北欧のカレリアン犬などは話がちがう。攻撃的なピレネー犬もクマを追い払うといわれます。イヌがみな役に立たないわけではない。
イヌにはイヌの行動様式がある。飼い主を救ったという一部の美談にまどわされ、過剰な期待をかけてはならないということです。
(2026年10月5日)
