ウクライナの日々を伝える写真のサイトがあります。
前回使った写真のなかで、「MFA Ukraine」とあるのはこのサイトからのものでした。ウクライナ外務省の https://war.ukraine.ua/ というサイトです。
政府の公式サイトだから、宣伝の一環でもある。そういう写真を新聞やテレビは使いません。でも無料で著作権フリーなので、ぼくは宣伝に乗ることにしました。戦争の実情を伝えるものが数多くあると思うから。そのなかのひとつに目を引かれました。

子どもが2人、並んで道ばたに座っている。
一瞬、何かと思う。でも向こうに列があります。兵隊たちが棺を運んでいる。ウクライナの人は葬列が通るとひざまづきます。小学生も、それに習っていました。
写真のキャプションにはこうあります。
「ウクライナを防衛したイワン・スタシュークの前にひざまずく学童。イワンは前線でロシアの侵略者と戦い倒れた。スラブータ市公式写真」
スラブータ市は、首都キーウの西300キロにある地方都市です。
おそらく戦死した兵士イワンの遺体が、生まれ故郷に帰ってきたのでしょう。イワンは故郷の大地にかえる。その姿を、小学生が見送っている。
こんな光景が、ウクライナでは毎日どこかでくり返されている。
戦争の暴力と破壊を伝える映像はメディアにあふれ、ぼくらはそのイメージになれてしまいました。どんな悲惨なイメージにも、またかとしか思わなくなった。ガザの影に隠れ、ウクライナが日本のメディアに出ることはもうあまりありません。
でも、戦争はつづいている。
人は死んでいる。

おなじような写真が無数にあります。
花を持った女性が泣いている。葬儀かと思ったら、そうではありませんでした。去年9月、ロシアとウクライナのあいだで捕虜交換が行われたときの一場面だそうです。
ロシアの捕虜になった夫が、ようやく帰ってくると知らされた妻なのか。深い安堵に、涙が止まらないのか。
くる日もくる日も、どこかでだれかがこうして涙を流している。安堵ではなく、悲嘆の涙がほとんどだろうけれど。
ウクライナの戦争は先の見通しがないまま、いまもつづいていると知ります。
(2025年10月31日)
