温暖化対策にGMを

 遺伝子組換え食品をめぐり、新しい議論がはじまっています。
 地球温暖化への有効な対策になるから、遺伝子組換え食品の生産を広げるべきだという議論です。これは見方を変えるなら、安全性をめぐる議論はもう終わった、遺伝子組換え食品は新しい枠組みで議論しようということでしょう(Should our future food be genetically engineered? May 13, 2024. The Washington Post)。

 遺伝子組換え食品が温暖化対策になるという議論は、ドイツのボン大学とアメリカのブレークスルー研究所が提唱しています。このグループは、遺伝子組換え、GM(genetically modified)でできた穀物は、そうでない穀物にくらべてヨーロッパでは炭素排出量を7.5%減らすといいます。おなじような研究結果を発表した別のグループは、GM作物が世界的に広がれば年間2300万トンの炭素削減になるといいます。これはイギリスの全自動車が半分に減ったほどの炭素削減になるそうです。

 なぜ遺伝子組換え穀物、GM穀物が炭酸ガスの排出を減らすかというと、要するにGM穀物は収量が多いからです。おなじ量の穀物をえるのに耕作面積な少なくてすめば、それだけ炭酸ガス排出量は少なくなる。
 だから温暖化対策のために、もっとGM穀物を栽培すべきだということになりそうですが、こうした研究はまだはじまったばかりで、科学者の議論もひとつにまとまっているわけではない。

 なるほど。
 でも温暖化以前に、GM食品ってぼくらの暮らしにどこまで入りこんでいるんだろう?
 そう思ってあらためて見たら、アメリカではすでに大豆の94%、綿の96%、トウモロコシの92%がGM作物でした。GMじゃない大豆なんてほとんど存在しない。
 GMだろうがそうでなかろうが、大豆から抽出されるタンパクに変わりはない。だから安全性も変わらない。そういうタンパクを、豆腐を、ぼくらはすでに食べつづけている。
 GMトウモロコシは牛の飼料になり、その牛肉をぼくらは食べつづけている。

 要するに、GM食品はぼくらの食生活にしっかり入りこんでいる。ぼく自身はもうGM食品の安全性を議論する時代ではないと思っています。

 その一方で、多くの人がGMに不安を持っていることもわかります。
 GMは放射能やワクチンとおなじように、科学者の理解が一般市民の理解とはかけ離れている現象のひとつでしょう。
 科学者のなかには、GMへの不安は「政治だ。科学ではない」と言い切る人もいる。でも、そこで科学がえらそうな顔をしてはいけない。そいう科学も過去にはさんざまちがったのですから。十分な時間をとるのは、一般社会が科学とつきあう上で身につけたひとつの知恵なのです。
(2024年5月17日)