「でも中国が」問題

 先週ぼくは、AI開発をいったん止めようと書きました。
 これを訂正します。
 止めるべきだけれど、それは不可能。だから緊急に「当面の対策」をとったほうがいい。ニューヨーク・タイムズのフリードマンさんがそういっています(It’s Already Too Late to Stop the A.I. Threat. By Thomas L. Friedman. Sept. 15, 2026. The New York Times)。

コラムニストのトーマス・フリードマンさん

 理由はかんたん、中国です。
 アメリカがAI開発を中止しても、中国は止めない。
 アメリカが止めているあいだに中国に先を越されたらどうするのか。中国なしの中止やスローダウンはありえない。
 中国は絶対にAIで止まらない。どんな対策を考えようと「でも中国が」で、すべてのプランは泡と消えます。
 核兵器の開発とおなじ。どちらかが一方的にやめることはない。

 アメリカではこの夏以降、アンソロピック社だけでなくオープンAI社、グーグル社でも、開発中の最新モデルが社外に「逃亡」し、他企業のコンピュータ・システムを侵略する「事件」が相次いでいます。
 AIは、自分で勝手に判断し、実行(侵入、破壊)するようになった。人間をだまして。おそらく中国でもおなじような事態が起きている。
 けれど、どんな危険があろうと米中の開発は止まらない。

 フリードマンさんは、AIを開発したマイクロソフト社のクレイグ・マンディー前研究責任者と懇意です。マンディーさんにじっくり聞いたうえで、こういっている。
・・・強力なAIがすでに社会に出回っており、アメリカも中国もこれをコントロールできない。予想を超えた重大な混乱をもたらすであろうこれらAIの脅威に対し、ともに力を合わせて防衛する合意が必要だ・・・
 しかし米中の合意がすぐにできないならば・・・。

 いま緊急にすべきは、社会経済に重要な金融や電力網などのインフラをAIの侵略から守ることだ。AIを阻止するファイアウォールを作るには、米中両国のAI開発者が力を合わせるしかない。
 中国のAI開発の現場にもくわしいマンディーさんは、現場の開発者同士なら米中の連携は可能という感触があるようです。
 いまはまずAI防衛策を講じること。当事者のあいだで。
 政府間の合意より、ずっと実現可能に思えます。
(2026年9月21日)