きのう、フロリダ州の培養肉禁止を「なげかわしいかぎり」と書きました。
地球温暖化を否定しているのとおなことですから。フロリダだけでなく、南部の州は軒並み地球温暖化を否定する保守共和党が政権を握っています。
一方、温暖化に危機感を抱くのは東部や西部の州、培養肉を禁止したりせずむしろ支援している。ニューヨーク州などは温暖化対策の一環として、食肉企業に対する訴訟を起こしているほどです。なげかわしいだけではありません(N.Y. State Sues JBS, the Brazilian Beef Giant, Over Its Climate Claims. Feb. 28, 2024. The New York Times)。
訴えられたのは、世界最大の食肉企業、ブラジルのJBS社アメリカ法人です。
ニューヨーク州のL・ジェームズ検事長は、JBSが食肉を生産する過程で出る大量の温暖化ガスをゼロにするといったのは、消費者をあざむく言動だったと指摘しました。具体的には、JBSのトマゾーニ経営責任者が去年インタビューで、「2040年までに温暖化ガスをネットゼロ、差し引きゼロにする」といったことなどをさしています。
検事長はこれらの発言が「温暖化対策が進むかのように誤解を与え、消費者をだましている」と、提訴の背景を語りました。
JBSは反論しているけれど、2040年までにゼロという発言はすでに撤回されています。またJBSは2017年、ブラジルの親会社が汚職などに関連し32億ドルの賠償金を払うことになったり、傘下の牧場の多くが先住民の土地にあることがわかるなど、さまざまな疑惑が報じられています。
そこに今回の訴訟が起きたことで、JBSがめざしてきたニューヨーク株式市場への上場はむずかしくなりました。
非営利団体マイティアースのG・ヒューロウィツ代表は、今回の訴訟は気候や環境問題に対する企業の対応を問うものだといいます。
「環境への配慮を欠く会社は、かんたんに排除されるという警告だ」
地球温暖化を否定し、培養肉も認めないフロリダのような州もあれば、大量の温暖化ガスを出して牛肉を作りつづける企業に、訴訟で厳しく迫るニューヨークのような州もある。極端なちがいはそれだけアメリカ社会の分断が進んでいることを示しています。
たいへんだね、ごくろうさん、とながめながら、ぼくは別の思いにとらわれます。
日本では牛肉をやめようとか、代用肉、培養肉にしようという声はほとんど聞かれない。温暖化にも地球環境にも、みんなほとんど関心がないのではないか。振り返ればいつのまにか原発は復活し、太陽光発電も代替エネルギーも進んではいない。分断がないのは平和だというより、むしろ無気力だからではないか。
そんなことをつらつら思いつつ、せめてぼくは牛肉を控えようかと考えています。
(2024年5月29日)