ぼくは9%

 ニュースを意図的に避ける。
 ニュース忌避をする人がいまや10人に4人もいると、5日の朝日新聞で識者が論じていました。いまは誰もが新聞テレビの代わりにネットでニュースを見ているのかと思ったら、ニュースの見方が変わっている。変化のひとつが、ニュース忌避なのでしょう。

 オクスフォード大学ロイター・ジャーナリズム研究所の世論調査が6月に明らかにしました(https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2024)。世界47か国、9万人あまりを対象にオンラインでアンケートした結果です。
 ニュースに「とても」もしくは「非常に強い」関心があると答えた人は47カ国で48%もいるけれど、2017年の63%からはかなり減りました。

多くの人はニュースをSNSで見ているが、フェイスブックで見る人は減っている
(ロイター・デジタルニュース・リポート2024より)

 しかも、ネットのニュースが事実かフェイクか不安だという人が、この1年で3ポイント上昇し、59%になっている。やっぱりみんな、ネットニュースを少しは疑っているんですね。
 こうしたなかで、ニュースは見ないとか、災害や戦争のニュース避けるといった「ニュース忌避」が39%もいる。あふれる悲惨なニュース、そのくり返しに感情的な疲労感を覚えるのでしょう。見ないわけではないが、意図的に見ないニュースがある。

 ネットニュースではなく、かつての新聞テレビはどうなっているのか。
 すべてが消えたわけではなく、一部はネット上で「有料購読」という形で生き残っています。紙やテレビからスマホやPCへ、ネット上で再生を図っている。

若者はティクトクでのニュース視聴が増えている
(ロイター・デジタルニュース・リポート2024より)

 ロイターの調査でなるほどと思ったのは、ネットで有料ニュースを購読する人が17%いることでした。金を払ってでも信頼できるメディアを見つづける人が一定数はいる。日本はその数字が、先進国最低レベルの9%ですが。

 世の中の圧倒的多数派は、無料の動画でニュースを見ている。
 有料ニュースは少数派。世界で17%、日本で9%。少数派が今後多数派になることは、まずない。
 ニューヨーク・タイムズなどをネットで有料購読しているぼくは、そういう少数派のひとりです。

 これは、多数派ニュースの忌避でもある。
 ロイターの調査を見て、この世界にはそういうタイプの“忌避者”が確実にいるんだなと思いました。忌避者は少数派ではあるけれど、有料メディアという“想像の共同体”でつながっている。みんなが見るニュースを見なくてもぼくに不安はない。むしろ安心していられるのは、この共同体への思いがあるからです。
(2024年10月8日)