コメのヒ素

 アメリカで生産されるコメには、かなりのヒ素を含むものがあると消費者団体が警告しています。日本は輸入米が増えているけれど、若干気になる情報です(Should I Be Worried About Arsenic in Rice? July 1, 2025. The New York Times)。

 コメは、日本で作ってもアメリカで作っても微量のヒ素が含まれる。食べたからといってただちに健康被害があるわけではないし、実害が報告されているわけでもありません。けれど消費者団体は、微量であっても乳幼児の脳の発達などに影響があると警告しています。

 警告を発しているのは、HBBF、ヘルシー・ベビーズ・ブライト・フューチャーズ(Healthy Babies Bright Futures)という、子どもの健康な発育を提唱する非営利の団体です。
 市販のコメに、基準を超えるヒ素やカドミウムなどの重金属を含むものがあると発表し、5月15日のCNNが伝えて話題になりました。
 HBBFはスーパーで市販されているアメリカ産と輸入のコメ145品目について、専門機関に重金属の調査を依頼しました。3分の1の品目がFDA、食品医薬品局の基準を超すヒ素を含んでいたそうです。

 FDAの基準は、乳児用コメのシリアルについて、ヒ素含有量を1キロあたり0.1ミリグラム以下にするように求めています。コメそのものについての基準ではなく、なぜシリアルについての基準なのか不思議だけれど、これはおそらく政治が介入した結果なのでしょう。
 政治を避け、科学的に議論をしようと思ってもコメのヒ素はけっこうややこしい。
 健康への毒性について、科学的な基準がないからです。

 ヒ素は、放射線(放射能)とおなじと思えばいい。
 どちらも、限度を超せば危険です。「致死量」はわかっている。けれど、どれだけ摂取すれば人の健康をどこまで、どう害するかはわかっていない。どんなにわずかでも有害と考えるべきだけれど、「健康への害」の境目がわかりません。現実には、ぼくらは毎日微量のヒ素や放射線を体内に取みながら、これまでどうにか生きてきた。理屈では有害、常識では安全。

 ヒ素も放射線も、通常の生活環境では問題にならない。
 唯一、これから脳が発達する乳幼児にかんしては、念のため注意したほうがいいということでしょう。乳児食は、可能ならコメ以外の穀物に替えるなどして。
 今回の調査では、カリフォルニア米はヒ素が少なく、日本のコメと同程度とわかっています。輸入米を買うならカリフォルニア米ということですね。
 高齢者が買うのは、どこのコメでもいいんじゃないか。いまさら微量のヒ素がちょっと体内に増えたところで影響はないだろうから。たぶん。
(2025年7月4日)