原子力発電に新しい時代が来たのだろうか。
これまでの巨大施設ではなく、ずっと小型でかんたんにできる原子炉を、たくさん工場や町に設置してゆくという方向です。それを可能にする新技術が見えてきたらしい。
ぼくは原発には反対だったけれど、デンマークがこの方向に向いていると知り、気が変わりつつあります(Denmark rethinking 40-year nuclear power ban amid Europe-wide shift. 14 May 2025. The Guardian)。

デンマークは全電力の80%を再生可能エネルギー、風力や太陽光、バイオマスなどで発電する「代替エネルギーの優等生」です。1985年以来、原発を禁止してきたけれど、ラース・アーガート気候エネルギー相が、このほど地元紙に語りました。
「新しい原子力発電の技術が開発されている。こうした新技術がデンマーク社会に何をもたらすか、われわれは知る必要がある」
40年にわたる原発禁止政策は転換されるだろうと、ラスムッセン元首相もいっている。
議論の焦点になっているのは、SMR(Small Modular Reactor)、「小型モジュール炉」と呼ばれる新しいタイプの原子炉です。
従来の原発が1基百万キロワットの巨大施設であるのに対し、SMRはその3分の1、30万キロワット以下のものを指します。
発電設備はずっと小型化できる。従来の原発が巨大ビル群なら、SMRは小型マンションのようなもので、より小さいものはトラックで運べるイメージらしい。
小さいからモジュール化、規格化できる。プレハブ住宅のように工場で生産し、どこでも組み立て可能とされる。

(Credit: U.S. Government Accountability Office, Openverse)
各国で、このSMR開発が進んでいます。
とはいえ、原発の原理そのものが変わったわけではないから、事故を起こせば危険だし、廃棄物の深刻な問題もある。しかしデンマークだけでなく各国が検討しているのは、気候危機という地球規模の課題があるからでしょう。ロシアの天然ガスは使えないし、AI時代の莫大な電力需要もある。再生可能エネルギーには自然条件の不安定性もあり、ヨーロッパの目はSMRに向いているようです。
理屈だけを考えれば、原発はやめたい。
その一方で考えます。原発の被害は、チェルノブイリでも福島でも「限定的」だった。原発にくらべれば、気候危機は地球規模で未曾有の被害をもたらす。SMR原発という考え方にも、一理あるのではないか。ぼくの想像力を超える問題を、さてどう考えたらいいのか。
デンマークの議論を、おりにふれ注視したい。
(2025年5月16日)