15日先までの天気予報。
いまは2週間予報もあるから、そんなのたいしたことはないと思ってしまう。でも予報の精度がAI、人工知能で格段によくなったようです。そのAIが「ディープマインド」だと聞けば、さすが、と思ってしまう(Google Introduces A.I. Agent That Aces 15-Day Weather Forecasts. Dec. 4, 2024. The New York Times)。
ディープマインドは、グーグルの傘下でAIを開発するイギリスの研究者グループです。
彼らが一躍有名になったのは2010年代後半、囲碁のプログラム「アルファ碁」で世界のトップ棋士を打ち破ったときでしょう。AIが人間を超えた歴史的な出来事でした。そのとき活躍したのがAI、人工知能のディープラーニングという手法です。過去の膨大なデータを記憶して「パターン」を見出す。学習を重ねて進歩する。
これをディープマインドは天気予報に応用しました。
ヨーロッパの1320地点の気象データをもとに15日予報をつづけたところ、97.2%の確率で既存の予報より正確だった。
ヨーロッパの長期予報はこれまで、日本の気象庁にあたるECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)が担当し、35か国がこの予報を使ってきました。ECMWFの長期予報は部屋ひとつ分もある大きなスーパーコンピュータを数時間動かしてできる。ディープマインドはずっと精度のいいものを数分で、ふつうのコンピュータで出してしまう。
アルゴリズムのちがいです。
ECMWFはいまのデータを使い、これから大気がどう変化するかを予測する。一方ティープマインドは過去のデータを参照する。過去10年、どのような予報があり、実際の天気はどうだったか。ちがいを照合し、まちがいをただす作業をくり返す。そうして行うパターン学習の訓練が、より正確な予報になっているらしい。
ハリケーンの進路予報も、既存の予報よりずっと正確だといいます。これらの結果は12月4日、科学専門誌「ネイチャー」に発表されました。
ティープマインドの予報は、いずれグーグルアースのようなサイトで一般にも公表されるでしょう。AIのおかげで、暮らしがますます便利になるのはありがたい。
その一方で、漠たる不安もあります。ぼくらは「観天望気」というむかしのやり方を忘れてしまっていいのだろうか。空気や、風や、陽射し、雲の動き。皮膚感覚をもっと大事にしなきゃいけないんじゃないか。考えるのをやめるのも恐ろしいけれど、感じるのをやめるのはもっと恐ろしい。恐ろしいというより、そんなふうになったらむしろつまらないんじゃないか。
何も気にせず、気にすることができずに暮らす、ある種の老人ホームのようで。
(2024年12月6日)