再エネへの意思

 スペインが再生可能エネルギーへの転換に力を入れています。太陽光や風力発電が順調に伸び、ときには供給が需要を上回る。電気が余る社会では、経済全体の「電気化」という未来の議論がはじまっています(Too much of a good thing? Spain’s green energy can exceed demand. June 16, 2024. BBC)。

 スペインは2018年、社会労働者党のペドロ・サンチェス首相が政権についてすぐ、化石燃料から再生可能エネルギー(再エネ)への大胆な転換にとりかかりました。目標は、2030年までに電力需要の81%を再エネでまかなうこと。そのために補助金や免税などの措置を取り、太陽光と風力発電は飛躍的に伸びました。いまでは再エネの電気が多すぎて「余る」場面も出てきました。
 もちろん電気が余りそうになったら火力発電を減らせばいいので、実際に電気が余っているわけではない。けれど電気が十分にあると、新しい議論が出てきます。

 経済の「電気化」です。
 石油や天然ガスに頼ってきた産業や社会活動を、これからどんどん電気に替えてゆく。サンチェス首相は2030年までに経済の34%を電気化する目標を掲げました。そうなれば化石燃料を減らすだけでなく、いまある原子力発電もいずれは停止できるでしょう。
 電気化は、化学や金属などの分野では無理があるかもしれない。しかし冷暖房のヒートポンプ化や運輸の電気自動車化など、多くの分野で可能です。経済界が「電気化」への意思を持てば実現できる。スペイン政府はその先頭に立っている。

 このニュースでぼくが感じたのは、スペインには「躍動感」があるということでした。それに対し日本はおなじ再エネでも、どこか「いやいやながら」やっている感がある。それはなぜなのか。
 20世紀の古い価値観にとらわれた、変わることのできない社会だからではないか。

 おりしも25日、ソニー、リコー、キリンなど、日本の代表的な企業87社が政府に再エネの拡大を求めました(朝日新聞デジタル6月25日)。日本国内の再エネはあまりに少なく遅すぎる。これでは国際競争に勝てない。
 世界の主要企業はいまや「再エネ100%」がうたい文句です。石油や原子力に頼らず、企業活動をすべて再生可能エネルギーでまかなう。炭素排出ゼロと胸を張る。
 日本の企業はそんなことができない。使いたくても再エネがない。これでは競争に勝てないと声を上げました。

 いやいやであっても、経済界は変わろうとしている。古い価値観からいちばん抜け出せないのは政治でしょう。そういう政治を選んでいる選挙民がいるという現実があります。
(2024年6月27日)