SNS、ソーシャルネットワークの健康被害は放置できない。
アメリカ保健行政のトップであるヴィヴェク・マーシー医務総監が、SNS有害論を強めています。タバコの包装に「タバコは健康を害する」とあるように、SNSも有害の警告ラベルを貼るべきだと訴えました(Surgeon General Calls for Warning Labels on Social Media Platforms. June 17, 2024. The New York Times)。
マーシー総監は去年5月にもSNSの害を警告しています。
「若者の精神が危機にひんしている現状を考えれば、ソーシャルメディアが彼らと彼らの家族にもたらしている苦痛をもはや看過できない」
こうした警告にもかかわらず、SNSを運営する企業は対策を取らなかった。こうなったらより強い手段に出るしかないと、今回の「警告ラベル」案になったようです。
具体的には、若者がSNSを使っていたらしょっちゅう画面に、「あなたの健康に有害です」という警告が出るようにする。
とはいえ強制はできない。タバコやアルコールとおなじように、警告を表示させるには議会での立法が必要です。SNS企業は表現の自由をたてに抵抗するでしょう。総監は「楽観している」というけれど、いつ、どういう形で実現するかは見通しが立ちません。
SNSは1日3時間以上使うと、十代の若者の多くに深刻な精神保健上の問題を引き起こすといわれます。自殺やうつ、不安が顕著に増すとも指摘される。一方、若者の自殺傾向が増えたのはSNSより貧困や社会的孤立、麻薬などが関係しているという反論もある。専門家の見方がまとまっているわけではない。
けれどマーシー総監は、あえて規制を強める方向に踏みきりました。
「SNSは子どもにとって大きな問題だ。子どもは衝動をコントロールするのがむずかしいし、彼らの脳はまだできあがっていない」
マーシー総監の議論で、感心したのは次のひとことです。
「私が受けた医学教育でもっとも重要なことのひとつは、危機にあって十分な情報を求めるべきではないということだ。いまある情報で、すみやかに最善の判断をしなければならない」
SNSが有害かどうか、結論は出ていないかもしれない。しかしことは育ちざかりの子どもの問題だ。十分な情報がそろうまで待ってはいられない。私は危険だと判断する、SNSには警告を表示させようと主張している。
情報が十分ではないから動かない、というのはしばしば逃げや責任の回避になります。マーシー総監は、自分は逃げないといっている。
指導者たるものの矜持でしょう。
(2024年6月20日)