これには笑ってしまいました。
いまの中国では、SNSだろうがどこだろうが、「占占点」と書くことができません。もしこの漢字3文字を書いたら公安警察に逮捕されるかもしれない。なぜならこれは痛烈な中国政府批判になるから(How blank sheets of paper became a protest symbol in China. By Sammy Westfall. November 28, 2022. The Washington Post)。
「占占点」に、中国語としての意味はありません。ただこの漢字3文字を横に並べてみると、鋭い人はすぐにピンとくる。
「占」の字は、大砲を右に向けた戦車。
戦車3両の列、「点」の下の部分は戦車につぶされた人間を表します。
いわずと知れた1989年、天安門事件の戦車男を表したもの。
33年前、中国政府は天安門で起きた反政府運動を徹底的に弾圧しました。多くの市民が虐殺された中国史の闇は、1枚の戦車男の写真によっていまなお多くの人に記憶されています。
でも、いま中国でこの写真を見ることはできない。
写真どころか、天安門を話題にすることもSNSに書き込むこともできない。徹底的な監視国家の中国で、こころある市民は弾圧に抗し「天安門事件」をさまざまな隠語で語りつづけようとしました。
最初に出てきたのが「5月35日」です。これは天安門事件が1989年の6月4日に起きたのを、5月35日と言い換えたのでした。それに気づいた当局が、すぐそういう書き込みをすべて消してしまった。
次に、2013年に出てきたのが「24周年」です。この年、24周年とか24年目といえば天安門をさすようになった。これもまた禁止。翌年の「25周年」、翌々年の「26周年」も、待ち構えたかのように当局が見つけ消し去ってしまいました。
そこで2014年に出てきたのが「占占点」だった。
いやじつによく考えたものです。
その「占占点」すら、ただちに禁止されてしまった。そういう表現を徹底的に見つける当局と、それにもかかわらず新らしい表現を編み出す中国人の知恵に、感動すら覚えます。
中国ではいま、過酷なゼロ・コロナ政策への反感が高まっています。異例の抗議行動に出た市民は、すべての表現を禁止されているという意味で、誰もが白紙を高く掲げている。何も書かれていない白紙。その白が、痛いほどの強さでひとつの思いを表している。
自由。
白紙を掲げる中国の人びとを、ぼくは尊敬します。
(2022年11月30日)