反トランプの地で

 トランプが選挙に勝ったのは大惨劇だった、でもアメリカを逃げ出す必要はない。
 コラムニストのケイト・コーエンさんが書いています。
 自分はブルー・ステート、民主党が政権を握るニューヨークの住民だから。
 なるほど。リベラルはそんなふうに受け止めるんだと思ったら、ニューヨークには特別な理由があると知りました。大統領選挙と同時に行われた住民投票で、女性の権利擁護などを州の憲法に書きこむと決めたからです。
 連邦政府はトランプ的になっても、州政府は従わない。アメリカの自治は強いと再認識しました(New York is my country now. By Kate Cohen. November 19, 2024. The Washington Post)。

 ニューヨーク州の憲法に新たに書きこまれることになったのは以下のような内容です。
・性別、ジェンダーによる差別をなくす
・多様なジェンダーの表現を保証する
・妊娠と出産についての女性の自己決定権を保証する
 性差別をなくし、LGBTQ+などの少数派を守り、人工妊娠中絶を認めるといった内容を州憲法に明記する。これをニューヨーク州の住民は62%対38%で可決しました。

 もともとニューヨークはリベラルな地で、これらの政策はおおむね既成事実だったといえます。でも住民投票で民意を確認し、憲法に書きこむことで、こうした政策をより強固な形にしたいということでしょう。
 連邦政府がトランプ共和党になってマッチョな白人男性が前面化し、性的少数者の迫害や中絶の禁止を進めても、ニューヨーク州は従わない、最大限に抵抗するということです。

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 コラムニストのコーエンさんは息子がゲイで、彼がトランプが勝ったような国からは出ていきたいといいだした。でもニューヨークにいるかぎりは大丈夫と説得しています。
・・・そりゃあニューヨークだって政治の腐敗やスキャンダルはあるけれど、私たちには女性知事がいるし、私たちは彼女とともにミソジニー(女性蔑視)と戦ってきたんだから・・・
 国が私たちを迫害しても、州は私たちを守る。そういう州を私たちは作る。

 社会や政治の成り立ちがまったくちがうから、同列には論じられない。それはわかっているけれど、でもちょっとうらやましい。
 日本でも、例えば横浜市は夫婦別姓が可能、というふうにできないだろうか。
 子ども食堂を支援する、同性婚を認める、難民を受け入れる。「優秀な大和民族」じゃなく、「生産性のない人たち」をもっともっと大事にする地域になりたい。
 国と自治体はちがうということを、はっきり意識できるようにしたい。
 ニューヨークの住民投票を見ながら、そんなことを考えました。
(2024年12月30日)