家庭内離婚のアメリカ

 アメリカは再び内戦になると恐れる人が増えています。
 戦争になってはいないけれど、民主と共和、リベラルと保守の分断と対立は激しくなるばかり。修復の可能性はほとんど見いだせません。
 これは家庭内離婚だと、作家のカート・アンダーセンさんはいいます。こんな状態をつづけるわけにはいかない(Has America Already Undergone a Soft Breakup? By Kurt Andersen. Aug. 9, 2026. The New York Times)。

 2021年以降、各種世論調査はいずれもアメリカ人の3分の1以上が、今後10年以内くらいには内戦がはじまると危惧していることを示しています。
 いまでいえばトランプ支持者とトランプ嫌悪者。この両者が話し合いで歩みよれるという人はほとんどいません。共和党の論客、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員は、「国家の離婚」まで求めている。
「分裂は広がりすぎて限度を超え、われわれは安全でなくなっている」

 作家のアンダーセンさんはいいます。
 国家の離婚はまだ架空の話だ。けれどこの国は着実に奇妙な形に落ちこんでいる。離婚していなくてもすでに愛はなく、関係は破綻してる。別れるのはきわめてこみいった話になり、かつ高くつくから、別れられずにいるだけだ。
 トランプ支持者と反トランプ陣営は、セラピーで修復できる段階をとっくに超え、相互不信と反発にこりかたまったカップルです。不幸な家族がおびえながらおなじ家のなかに住み、無視とだんまりを決めこんで、会えばののしりあうばかり。

 これに似た状態から30年ほどして、19世紀のアメリカは南北戦争になりました。
 そうならないよう、大胆な発想の転換が必要だとアンダーセンさんはいいます。
 アメリカの州や地域は、もっと独立性を高めてもいいのではないか。たとえばスペインのように地方の高度な独立性を認める。住民の税金はすべて地方政府のものとなり、その一定額を交渉で国に渡すというようなしくみです。
 スイスにはスペインとはまた別の、アメリカにはない地方自治の形があります。

 あるいはソ連時代のチェコスロバキア。1993年、チェコスロバキアは平和裏にチェコとスロバキアの二国に分離独立しました。ベルベット革命ともよばれるこの分離に学ぶべき形があるかもしれない。
 アメリカがそうした道を模索するのはきわめてむずかしい。けれど子どもたちのことを考えるなら、このまま進むことはできないとアンダーセンさんはいいます。
 これは、選挙による政権交代で解決できる問題ではないのです。
(2026年8月12日)