星は光る

 トランプ再選で、気分はうつです。
 これから4年も、アメリカのあの醜悪を見なければならない、たまらんなあとため息が出る。
 その一方でこの3か月、カマラ・ハリスさんには楽しませてもらいました、ありがとうといいます。

 ハリスさんはトランプ勝利が決まったあと、母校のハワード大学で支持者に語りかけ、自身の敗北を認めました(Harris conceded the race at her alma mater. Nov. 6, 2024. The New York Times)。

・・・私はアメリカ民主主義の基本に従い、敗北を受けいれる・・・
 ハワード大学に集まった支持者の多くは若者でした。
 誰もがこれからこの国は、自分たちはどうなるのかと不安を抱えている。そういう若者にハリスさんは語りかけます。
・・・大丈夫、戦いは終わっていない。これからはじまる。戦いには時間がかかることもあるけれど・・・
 そして付け加えます。
・・・星は、闇が濃いほど輝くものだ・・・

 闇。
 これからのトランプ時代。
 そういう闇のなかでこそ、私たちの希望は光る。
 ハリスさんはそういいたかったのでしょう。けれど選挙からしばらくしても、ソーシャルメディアは8年前にくらべ奇妙に平静だそうです。多くの人は、この現実のもとで生きるしかないとみずからにいい聞かせているのではないか。

 アメリカもまた、ふつうの国になった。
 選挙が終わったいま、ぼくはそんなふうに考えます。
 ふつうの国がふつうの指導者を選び、人権や環境保護、多様性や温暖化の危機を訴える人は少数派になった。多数派は「多数派ファースト」といい、少数派を、移民やLGBTQを排除する。アメリカで起きているのは特別なことではない。ヨーロッパでも日本でも、おなじことが起きているのではないか。

 そういう時代に、ぼくはどう生きたらいいのだろう。
 頭のなかに漂うのは、「少数派」ということばです。
 少数派として生きる。結果としてそうなるのではなく、はじめからそれを意識する。そんな生き方があるのではないか。晩秋の木枯らしに、そんなことを思います。
(2024年11月8日)