こんなことがあるんだ。
老化を止める研究。若返りは望めないけれど、「より健康な老後」はありうる。
中心にあるのは、炎症老化という現象です。炎症老化を止めれば、老化への対策が立てられるという考え方があるようです(A Common Assumption About Aging May Be Wrong, Study Suggests. June 30, 2025. The New York Times)。
おおざっぱにいうと、老化は炎症によって起きる。
炎症というと、肺炎のように感染性の免疫反応を想像するけれど、そうではない非感染性の炎症、NCDというのがある。これらNCDは加齢とともに増加するので、WHOは「医学・保健衛生上の重要な課題」とみなすようになった。
慢性化したNCDは、炎症(inflammation)と老化(aging)をあわせたインフラムエイジングinflammaging、日本語では「炎症老化」といわれるようになった(自治医科大学・高橋将文教授「Inflammaging(炎症老化)」から)。
老化とは、慢性の非感染性炎症のことらしい。

老化が進むぼくの身体は、炎症を起こしているのか。
とすると、これまでの捉え方が一変します。老化は体内に老廃物がたまり、機能が低下してダメになる静的なイメージと思っていた。どうもそうではなく、慢性的な炎症がさまざまな形で進んでいるという、より動的なイメージらしい。
身体がサビてぼろぼろになると思っていたのが、あちこちに小さな火事が起きてくすぶっている感じになった。
炎症老化はなぜ、どのようにして起きるのか。
これが先進国と未開の地に暮らす人びとのあいだではちがうという研究があって、議論になっているようです。
炎症老化は加齢が引き起こすのではなく、先進国の文明が引きこすというのですね。よくわからないけれど、こうした議論を通して知ったのは、原因はともあれ、炎症老化を防げば老化は防げるということです。

その発想で、老化防止薬の開発がはじまっている。
炎症老化の過程では、免疫反応にともなって体内にさまざまなタンパクが出現する。これらタンパクを除去あるいは抑制すれば、炎症老化は緩和され治療への道がひらける。すでに一部治療薬の臨床試験が進んでいるそうです。
不老長寿なんて望まない。でも「健康な末路」につながるなら、老化防止薬は実現してほしい。ぼくの場合には間にあわないだろうけれど。
(2025年7月2日)