先週末、ウクライナ戦争の深層を伝える記事が2つありました。ともに、ぼくにとっては久しぶりに読みごたえのある特集でした。
ひとつは、ワシントン・ポストが16日に伝えたロシア軍精鋭部隊の末路です。
ウクライナの情報機関が入手した軍内部の文書を、ポスト紙が専門家とともに読み解きました(‘Wiped out’: War in Ukraine has decimated a once feared Russian brigade. December 16, 2022, The Washington Post)。
この内部文書は、ロシア軍「第200機動狙撃旅団」の記録でした。
第200旅団は、フィンランド国境に近いムルマンスク付近に駐留する部隊です。ロシア最西部にあって、西欧のNATO軍と対峙する精鋭部隊として知られていました。
第200旅団は、2月に戦争がはじまるとともに北部戦線のハルキウに出撃しています。しかしウクライナ軍の激しい反撃で壊滅的な被害をこうむり、西側の推定で1400人規模だった旅団は5月28日時点で900人しか残っていませんでした。この人数には入院中や「戦闘拒否者」も含まれます。兵員だけでなく、最新鋭の戦車や装甲車などの装備も多数が破壊されるか、捕獲され失いました。
司令官は戦闘で呆然自失となり、旅団の指揮が取れなくなって後方に搬送されたと、文書には記録されています。
食料や装備は不足し、士気は落ちる一方、補充兵は訓練不足で十分な戦力にならない。それでも北東部に配置された第200旅団は7月、ふたたびウクライナ軍の急襲を受けて敗走します。その記録を見ると、戦闘に負けたというより、軍隊の体をなしていない集団が内部崩壊を起こしたようなものだと専門家は分析しました。
ポスト紙は内部文書を伝えるだけでなく、ウクライナ軍とロシア側関係者に取材して裏付けをとり、精鋭部隊がいかに凋落したかを伝えています。そこから浮びあがる全体像は、プーチン大統領が戦略的な誤算を重ねてこの戦争をはじめ、いまなおつづけていること、それが末端の兵士にまで悲惨をもたらしていることでした。
かねて伝えられるロシア軍のひどさが、うわさや推測ではない、実感とともにつかめる貴重なナマの資料です。よくぞこんな資料を入手し報道したものだと感心しました。
けれど翌17日のニューヨーク・タイムズは、さらにその上を行きます。
「プーチンの戦争」というタイトルの特集が、膨大なロシア軍内部資料と映像、傍聴されたロシア兵の生の声をもとに組まれました。ダウンロードしたらA4で50ページ近くにもなる大記事です。そのなかの目についた記述を、稿を改めてメモしましょう。
(2022年12月19日)