AGIの登場

 AGI、汎用人工知能はいつできるか。
 2,3年先かもしれないし、今年中かもしれない。そんな議論がAIの最先端分野で飛びかっています。
 いつになるにせよ、そのための準備をしよう、いますぐにも。
 と、ニューヨーク・タイムズの専門記者が呼びかけています(Powerful A.I. Is Coming. We’re Not Ready. By Kevin Roose. March 14, 2025. The New York Times)。

 AGIっていわれてもピンときません。
 AI、人工知能はもうあるじゃないかと思うけれど、AIはAGIではない。これまで計算や病気の診断、文章づくりなどに抜群の能力を発揮してきたAIは、特定の目的には使えるけれど、なんにでも使えるわけではない。人間の脳のようなAGI(汎用人工知能、Artificial General Intelligence )は、まだありません。とはいえ、その実現はすでに視野に入ったとケヴィン・ルース記者はいいます。
「かなり近い将来、来年か再来年、もしかしたら今年中にもどこかの企業がAGIをつくったと宣言するだろう」

 ニューヨーク・タイムズで長年AIを取材してきたルース記者は、最先端のAI企業トップだけでなく、ノーベル賞学者のジェフリー・ヒントン氏やモントリオール大学のヨシュア・ベンジオ教授ら、人工知能の生みの親や最深層を知る専門家たちも取材している。日本の記者や専門家とはレベルがちがいます。

 そのルース記者が、AGIはまもなく出現し、世界は変る、いまのうちに対策にとりかからなければならないといいます。
「かりにAGIが10年後になったとしても、準備が早すぎることはない。エネルギー・インフラの整備、サイバー防衛の強化、薬剤開発規制の見直し、悪用防止の規定、リテラシー教育、AGIの出現で陳腐化する雇用や社会活動への対応。これらは、AGIがあろうがなかろうがとるべき対策だ」

 ルース記者が本物のジャーナリストと思えるのは、次のような記述です。
「AGIの危険について書くと、メディアのなかにも笑うものがいる。この問題は、中心に近い人ほど真剣に受け止め、中心から離れるほどそうではなくなる」
 中心を取材している専門記者だからこそいえることでしょう。
 ぼく自身、AGIが出現して何がどう変わるか、具体的なイメージは描けません。けれど少なくとも「AGIリテラシーの教育」が重要なことはわかる。ぼくらの周囲にはフェイク情報が氾濫し、AGIの出現でそれがさらに悪化するでしょう。フェイク時代を生き抜くために、ぼくらはAGIリテラシーを切実に必要としています。
(2025年3月17日)