ファストファッション

 こんな安物商品の大量消費、大量廃棄をつづけていていいんだろうか。
 ファストフードならぬファストファッションの実情を読み、やっぱり安いからといって買うのは「少し、控えようか」という気になりました(Scenes From the Front Lines of Our Addiction to Fast Fashion. Nov. 25, 2022, By Rachel Greenley. The New York Times)。
 アメリカのザラやシーイン、ヨーロッパのH&M、日本ならユニクロといったブランドのファストファッションはぼくらの消費スタイルを変えました。見ばえがよく手ごろな衣類が、こんなに安いのかという価格で山積みされている。セーターって1万円はするものだと思っていたら1980円、衝動買いしたことがありました。

 きらびやかなショッピングセンターで飛ぶように売れるファストファッションの背後には何があるか。返品センターで働くレイチェル・グリーンリイさんはいいます。
・・・私たちはなんでこんなに使い捨ての服を買うんだろう。低賃金労働で、地球環境にさらに大きな負荷をかけるこういう服を・・・

 時給18ドル75セントのグリーンリイさんは、顧客が送り返してきた商品を処理するのが仕事です。もどってきたTシャツに汗じみはないか、下着に汚れはないか、ドレスは破れていないか、1品につき2分で調べ、ふたたび商品として売り場にもどすか、捨てるかを判定します。
・・・世界で7500万人の労働者が衣類製造に従事している。そのうち生活できるだけの賃金を受け取っている人は2%以下だ。私たちは快適な暮らしをしながら、世界の反対側で有色人種の低賃金労働者がつくる衣類を買う。企業が安さを実現しようと思えば、必然的に労働者の賃金はカットされ危険な労働環境が増える・・・
 値下げ圧力の過酷さは、製造現場だけでなく、輸送、販売、配達、返品センターなどすべての部分に及びます。それは「快適な暮らし」からは見えない。

 グリーンリイさんは現場の労働者であり、また大学の研究者でもある。ファストファッションの衣類は、最終的に66%がゴミとして埋められ、19%が焼却されるという統計にふれてこういいます。
・・・有名ブランドは持続可能性に努力しているという。しかし持続可能ではない。経済は無限に成長すると思われているが、自然はそうではないのだ・・・
 こんなことはつづくはずがない、というのが現場の実感です。

 その実感がどのようなものか想像します。そして思います。
 ファストファッションなしで暮らすのはむずかしいけれど、「できることから少しずつやる」しかないかなと。
(2022年11月28日)