外から見る

 日本はもう消えてゆくだけの国じゃないか。
 いいことはなにもない。格差は広がるばかり、若者は希望をなくしている。経済で韓国、台湾にも抜かれ、男女平等は世界最悪のレベル、だのに居座りつづけているえらそうなオッサンたち。ああ、もうどうでもいい。
 と、なげいていたら、そうでもないよ、って声がしました。
 経済界の大御所、ポール・クルーグマンさんが、日本、意外にがんばってるじゃないのといっています。なるほどこういう見方もあるかと、少し考えを変えました(What Happened to Japan? By Paul Krugman. July 25, 2023, The New York Times)。

 クルーグマン論のポイントは、日本経済を中国と比較しているところにあります。
 つい最近までの中国経済は、日の出の勢いだった。でもいまは陰りが見え、中国もいずれ日本とおなじように衰退するという見方が経済界にはあるそうです。これに対し、クルーグマンさんはノーといっている。
 中国が日本とおなじようになるなんてことはない。もっと悪くなる。
 え? と思いますよね。どうして?

 まず日本について見ると、日本経済は90年代、購買力でアメリカ経済の40%にまでふくれあがったけれど、いま20%近くに落ちている。30年で半分になってしまった。でもこれは日本の高齢化が大きな要因だろうとクルーグマンさんはいいます。これだけの高齢化が進むなかで、なかなかうまくやってきたのではないか。

 高齢化と人口減少が進む社会では投資が減退し、失業率が上がるとされるが、日本は雇用を維持してきた。それができたのは莫大な借金財政のおかげという批判もあるけれど、見方によってはこれは、高齢化のもとで経済を維持するお手本ともいえる。
 クルーグマンさんは、「日本が疲弊し停滞した社会だといい切るのはまちがいだ」ともいいます。日本の社会は想像以上にダイナミックで文化的な力があり、「東京は、新しいパリだ」という声まであるといいます。

 問題なのは中国。経済がバランスを欠き停滞しはじめたこの超大国は、日本のように巧みに高齢化、少子化を乗り切ることができるかどうか。ほかの多くの新興国とおなじように、一時はふくらんだけれど結局は衰退していく、「中所得国の罠」に陥るのではないか。
「私は中国専門家ではないが、いまのような硬直した国家体制のもとでそうした変化を切り抜けるのはむずかしいと思う。すでに中国は、日本がかつて経験しなかったレベルの若者の失業が起きている。だから私は、中国は日本のようにならない、たぶんもっと悪くなると思っている」

 うーん、そうかなあ。でも日本にいるより、外から見たほうがバランスの取れた見方ができるのかもしれませんね。
(2023年7月28日)