キウィ復活

 ニュージーランドでキウィが復活しています。
 果物ではなく、鳥のキウィ。
 島国ニュージーランドはかつてキウィの天国でしたが、白人とともにやってきたネズミやイタチのせいで絶滅の危機にひんしました。しかし天敵をなくす作戦が進み、キウィの再導入、復活が進んでいます(After Decades of Decline, a Feathered Icon Breeds in New Zealand’s Capital. Dec. 4, 2023. The New York Times)。

 先週ニュースになったのは、野生のキウィの幼鳥が2羽も孵化したことでした。それも首都ウェリントンに隣接するマカラという丘陵地帯です。環境活動家が手のひらに乗せた2羽のキウィの幼鳥は、ニュージーランド自然保護の記念すべき成果でした。

キウィが”復活”したマカラ地区(ニュージーランド)
(Credit: Yagerkarl, Openverse)

 ニュージーランドはかつて、キウィがどこにでもいたようです。それが1800年代にイギリス人が入植し、彼らとともにネズミがやって来ました。またウサギを駆除するために導入したオコジョやイタチもいます。そういうたくさんの天敵が、空を飛べない鳥キウィを襲って食べつくしました。200年前に1400万羽いたキウィは7万羽に減り、いまは保護区や離島に残っているだけです。
 そのキウィを復活させるプロジェクトが本格化しました。
 政府は2050年までに、キウィの天敵であるオコジョやネズミを一掃するというきわめて野心的な計画を立てています。環境団体CK(キャピタルキウィ)が中心となり、マカラ地域に天敵捕獲用のワナ5千個が設置されたのが5年前でした。
 地元の小学校も教室の外にワナを設置し、捕らえたネズミやオコジョを数えて算数の授業にしています。子どもたちはネズミの死体を近所の池に住むウナギの餌にしました。そうして天敵が減ったのを確認し、CKは去年、60羽のキウィをカマラの丘に試験的に放鳥しました。
 ボランティアのテレーズ・マクロードさんは、そのときを振り返っていいます。
「もう心配で心配で、夜も寝られなかった。ネズミが夢に出てきて」
 大丈夫、ネズミはマクロードさんの夢以外には出てきませんでした。

 1年たち、追跡調査ではすべての個体が生存しているようです。
 しかも先週は2羽の幼鳥が孵ったと確認されました。この100年間、誰も見たことがなかった「自然のなかのキウィ」がよみがえったのです。
 キウィは警戒心が強く夜行性で、めったに見られない。でも住民の目撃例が出てきました。9月のある日、マウンテンバイクに乗っていたショーン・ダガンさんは、自分が目撃したものが何か最初はわからなかったといいます。
「アボカドに長い足が生えたみたい。まさかキウィだとは思わなかった」
 散歩道にキウィがいる。これはもう地上の楽園です。
(2023年12月8日)