パタゴニアを着て「トランプ・ノー」といおう。
ぼくはひそかにそうつぶやいています。
アウトドア・アパレルの有名ブランド、パタゴニアはかねて環境保護に熱心でした。そのパタゴニアが環境だけでなく、民主党リベラルにも大量の献金をしている。これは大統領選挙で再選をめざすトランプ候補にノーを突きつけたことになります。そういう企業は積極的に応援したい。ぼくが応援して何が変わるわけでもないけれど、気分の問題です(Patagonia’s Profits Are Funding Conservation — and Politics. Jan. 30, 2024. The New York Times)
ニューヨーク・タイムズの調査報道が明らかにしたところによると、パタゴニアは2022年9月以来、環境保護運動や民主党の支援のために累計7千100万ドル、約104億円を寄付しました。寄付した先はアラスカの鉱山開発を阻止するための土地の購入や、南米の環境保全運動、民主党の上下両院議員団や各地の選挙での候補者支援など、多岐にわたります。
寄付は、パタゴニアがそのために設立したHC(Holdfast Collective)と呼ばれる非営利団体を通して行われている。HCの責任者、グレッグ・カーティスさんは、パタゴニアは別に民主党を支援しているわけではないけれど、環境保護に積極的な政治家を支援したら民主党ばかりになったといっています。
当然でしょう。
保守・共和党の政治家の大部分は環境保護には冷淡です。気候温暖化なんてウソっぱちだと否定するものが少なくない。トランプ候補自身、大統領になったらどんどん石油を掘るといっている。安い石油が大量にあふれる「偉大なアメリカ」にしようといっている。
そいういう政治家に対抗しようというのだから、パタゴニアはえらい。
と、ぼくがパタゴニアを持ち上げるのは、以前からパタゴニアに共鳴しているからです。
創設者のイヴォン・シュイナードさんはもともと登山家で、環境問題に理解が深い。パタゴニアの製品はオーガニックや再生の素材を使い、工場労働者の福祉は守る。企業利益は再投資する分を除き、すべて環境保護に寄付すると宣言しています。こんな良心的な企業はめずらしい。だから値段が高い。でも買う価値はあるので、ぼくは愛用しています。
パタゴニア製品は、もしかして自分が着ているものはウィグル労働者の血と涙でできているんだろうかなんて、心配する必要がない。
もうひとつ指摘したいのは、寄付の形です。
パタゴニアの寄付を進める非営利組織HCは、きわめてスリムで簡素な組織です。赤十字のように、寄付金の多くが組織の運営のために使われる巨大組織ではない。HCを経由してのパタゴニアの寄付活動は、社会貢献の新しい形としても注目されています。
ぼくは、パタゴニアを着て町を歩きます。
(2024年2月1日)