戦艦大和や零戦には、いまなお魔力があります。
巨艦ヤマトの雄々しさ、無敵零戦のロマン。小児的な妄想とわかりながら、ああいうものがあったのにどうして日本は負けてしまったのか、などとつい思ってしまう。敗戦はヤマトやゼロのせいではなく、日本という国の愚かさだったというのに。
大鑑巨砲には魔力があります(小児的な男にとっては、ですが)。
その魔力から抜け出そうという兆しが、アメリカ軍のなかに起きている(The Pentagon is learning how to change at the speed of war. By David Ignatius. June 4. 2024. The Washington Post)。
ペンタゴン、米国防総省にもっとも深く食いこんでいるD・イグネシアス記者の記事です。
・・・ペンタゴンは半世紀にわたり、空母、戦略爆撃機、戦車、戦闘機が居心地よく永遠に存続できるよう、壁を作り変化から守ってきた。ここに「不快」や「混乱」をもたらさなければならないという主張が聞かれるようになった・・・
不快や混乱というのは、カッコいい大鑑巨砲の時代じゃないという意味です。
1機100億円もする最新鋭の戦闘機より、はるかに安いドローンを大量に使う。それも中国製ではなくアメリカ製にしてAI、人工知能を搭載し、自律的に編隊を組んで攻撃できるようにする。そんな“不快な構想”が地歩を固めている。
変化をもたらしたのはウクライナでの戦争でした。
戦車や大砲も必要だけれど、おなじく重要なのがドローン。そのドローンは電波妨害、ジャミングに弱い。この障壁を乗り越えるために、電波に頼らず自律的に飛ぶことのできるドローンが必要です。ドローンの自律性、そのための技術開発がペンタゴンの急務でした。
イグネシアス記者は、ペンタゴンのキャスリーン・ヒックス副長官の話として、こうして開発された「最初のドローンシステムが、先月戦闘員に引き渡された」ことを伝えています。具体的にどんなドローンが、どこでどんな戦闘員に引き渡されたかは明らかにされていない。ウクライナかもしれないし、そうでないかもしれない。けれどこれは、ペンタゴンが驚くほど短期間で新型ドローンの試作品を開発し、実戦に配備したということでもある。大鑑巨砲に安住するアメリカの軍・軍需産業・議会という「鉄の三角同盟」にとっては、由々しき事態でしょう。
そういう時代に日本はどうすればいいのか。
アメリカの巡航ミサイルを大量に購入するのは、不要になった旧型兵器の払い下げに利用されるだけではないか。それより、どうすれば中国に頼らずに高性能の「自律型ドローン」を開発できるか、そんなことを考えた方がいい。
大鑑巨砲的な巡航ミサイル、それに対し、ハリネズミ的な自律ドローン。こちらの方がより専守防衛的です。空洞化された平和憲法のもとにも、なんとか収まる戦略ではないでしょうか。
(2024年6月11日)