ひと目でわかるように

 ジャンクフードをやめよう。
 ことあるごとにそういわれるけれど、ジャンクフードは減らない。アメリカでも日本でも、みんなますます手軽でおいしい(感じがする)スナック菓子や加工食品に手を伸ばしている。
 それに対し、やめろというのではなく、「警告ラベル」をつける動きが進んでいます。実際に効果があるというから、日本でもしてみたらいいかもしれない(How to Help Americans Eat Less Junk Food. June 30, 2024. The New York Times)。

 たとえばEUが使っている「ニュートリスコア」というのがあります。
 栄養の成績表ですね。スーパーで売っている食品などにこれが表示されるようになりました。加工食品が「A=健康にいい」から「E=健康によくない」まで、5段階で評価され、ひと目でわかるような表示です。

「ニュートリスコア」を表示した食品
(Credit: Riquix, Openverse)

 たとえばこのハムは「評価C」です。

 評価は、塩分や砂糖、油脂などがどれだけ含まれるかで決まります。EUの専門委員会が、WHOの基準などをもとに設定し、多くの加工食品に表示されるようになりました。
 なかなかすぐれたアイデアです。

 日本にはこういうしくみがないから、消費者は食品パッケージの裏を見なければなりません。こまかくびっしり書かれた成分表で、塩分や糖分、脂肪分や添加物を読み、判断しなければならない。そんなのいちいち読んでいられないという、いそがしい人が大部分でしょう。そういう人でも、ニュートリスコアがあれば一瞬で健康にいい食品か、そうでないかが判断できる。

 チリやウルグアイなど、南米の国ではニュートリスコアではなく、8角型の評価スタンプが使われています。これで消費者の58%は購買習慣を変えたといいます。もっと健康な食品へ乗り換えるか、評価の低い食品は買わなくなった。

 こういう警告表示をアメリカでも進めようという運動がはじまっています。FDA、食品医薬品局が公聴会を開いているから、やがて法制化されるかもしれません。

 食品産業には文句があるでしょう。塩分や糖分、栄養成分やカロリー、アレルゲンなどは、すでにこまかく表示している、その上に警告はやりすぎだと。でもそういう情報を「ひと目でわかりやすく」表示するのが大事なのですね。
 食品の成分表示は、「メーカーの責任逃れ」のためにあるのではない。消費者にわかりやすく伝わってはじめて、「消費者のための情報」になる。警告ラベルというよりは評価ラベルを活用しているEUや南米は、ぼくらよりちょっと先を行っている感じがします。
(2024年7月17日)