デジタル・リテラシー

 十代のメディア依存が急激に増えている。
 WHOの研究機関がこのような報告をまとめました。でも、だからソーシャルメディアを禁止しろというのではなく、どう賢く使うか教える「デジタル・リテラシー教育」が必要だといっている。日本の教育や行政にはない視点です(Sharp rise in problematic teenage social media use, study says. Sept. 26, 2024. BBC)。

 未成年者のネット利用、ことにソーシャルメディア依存はすでに何年も議論になっています。それが未成年者の精神保健に深刻な影響を及ぼし、うつや不安、自殺の増加を招いているといわれるようになったのはここ2,3年でしょう。去年5月、米ホワイトハウスのマーシー医務総監は、「ソーシャルメディアは子どもたちにとって安全ではない」と警告を発しています。

 今回はヨーロッパからの警告です。
 HBSCというWHOの研究機関が、44か国の28万人の未成年を対象にソーシャルメディアの利用状況を調べたところ、11歳から15歳の少年少女のなかで、ソーシャルメディアの「問題となる利用」が2018年の7%から22年には11%にまで増えていました(調査対象に日本は含まれていない)。

 問題となる利用というのは、利用時間の長さだけでなく、依存症のようになっている場合をさします。たとえば「日中はつねに友だちとネットでつながっている」ような使い方、ネットを使っているというより、やめられない状態です。
 問題となる利用は、以下のような兆候がある。
・ソーシャルメディアに没入するあまり、そのほかの活動がなくなる
・ネット利用でよく口論になる
・どれだけの時間使っているかを正直にいわない
・引きこもり状態

 WHOヨーロッパ支部のハンス・クルーゲ博士は、未成年者でもソーシャルメディアを使いこなしている場合があると指摘する。依存にならないようにするには親や教師だけでなく、行政もかかわる「デジタル・リテラシー教育」が必要だといっています。
「ソーシャルメディアはうつやいじめ、不安、学業の不振といったマイナスをの悪影響をもたらす可能性があり、早急に持続的な対策をとるべきだ」

 アメリカやヨーロッパではこうした対策が唱えられ、学校でのスマホ使用禁止などさまざま措置が取られている。でも日本では、厚労省や文科省のサイトを見ても、子どもとソーシャルメディアの問題を論じているところは目につきません。こと精神保健となると、避けてしまう文化的な背景があるのでしょうか。
(2024年9月27日)