イギリスにも、なかなかいいシャンパンがあるそうです。
ウソだろ、というのは古い世代。時代は変わった。「あのイギリス」にもフランスに負けないシャンパンができるようになりました(In a warming world, English sparkling wine challenges French champagne. October 28, 2024. The Washington Post)。
イギリスのシャンパン、なんていってはいけません。発泡酒ですね。
シャンパンはフランス・シャンパーニュ地方の発泡酒だけに許された呼称です。だからイギリスの発泡酒、これが本場の味になってきました。
いわずとしれた気候変動のせいです。
この30年でイギリスの年間平均気温は1度上がった。その1度でぶどうの出来はまったくちがうものになる。
ワイン産業と縁のなかったイギリスに、いまやワイン用のぶどうを栽培するワイナリーが1000か所、醸造所が400社と、爆発的に増えたそうです。こうした醸造所のなかから国際コンクールで連続して賞を取る発泡酒も出てくるようになりました。
生産地はおもにイギリス南部です。
フランスのシャンパーニュ地方とおなじ白亜土という土壌で、保水性がよくブドウ栽培に適している。発泡酒に適したシャルドネやピノ・ムニエなどの品種が作られるようになりました。2020年に最高のワイン醸造者に選ばれたランガム醸造所の白ワインは、「バランスがとれ、複雑で透明な質感ときめ細かい泡がある」と称賛されている。
いまやイギリス王室も、晩餐会などの発泡酒はイギリスのものを出します。その他のワインは依然としてフランス産らしいけれど。
気候変動は、世界のワイン生産を変えている。
国際ワイン連盟は去年、極端な気候と病原カビのために世界のワイン生産は60年ぶりの歴史的な生産減といっている。フランスでも、ことしシャンパーニュ地方の生産は16%低下すると予測されています。
すでにフランスのシャンパン醸造業者2社が、イギリスでのブドウ生産に踏みきりました。そのうちの1社、タッティンガー社は1本67ドルの高級銘柄を1万本作るまでになっている。本場のシャンパンには及ばないといいながら。
これを書くときに、シャンパンかシャンペンかで迷いました。日本ではどちらの呼び方もあるので。でもフランス語の発音に近いのはシャンパンでしょう。ということでシャンパン。でもそんなの、いずれ問題でなくなるかもしれない。シャンパーニュでシャンパンができなくなるかもしれませんから。
(2024年10月31日)