食べ物を大事にする

 こういうのがもっと広がるといい。
 フードロス、食べられる食品がゴミになるのを減らすアプリです。
 町中の商店が売れ残った食品をネットに出し、それをスマホのアプリで知った消費者が安く買い取るしくみです。商店は捨てるより売ったほうがいいし、消費者はおいしい食品が安く手に入る。社会全体ではフードロスが減る、なかなかすぐれたしくみです(Another Way to Keep Food Out of the Trash. Nov. 26, 2024. The New York Times)。

 トゥー・グッド・トゥー・ゴー(Too Good To Go)という名前のアプリです。捨てるのもったいない、という意味でしょう。
 9年前にデンマークの女性、メッテ・リッケさん43歳がはじめました。たちまち人気となり、参加する商店やスーパー、食品企業は19か国の17万7千社、利用登録者は1億人を超えます。あのスターバックスも参加している。

「Too Good To Go」創設者のメッテ・リッケさん
(Credit: Web Summit, Openverse)

 どういうしくみかというと、商店や企業が売れ残り品をネットに出します。「菓子パンセット、5個千円」というように、品名と値段、写真を示し、いつ、どこで受け取れるか表示する。それをスマホで予約した消費者が、指定の時間場所に行って受け取る。もちろんディスカウント価格、代金はネット上で決済です。
 消費者は近所のどこにどんなものがあるか、スマホで知り、気に入ったものがあれば予約して安く手に入れる。便利でお得と、たちまち広がりました。

Too Good To Go で販売される商品の例
(Credit: Dr Korom, Openverse)

 リッケさんは小さいころから、食べ物をむだにしてはいけないと親にいわれたそうです。フードロスを減らすのは生き方の問題でもあり、また温暖化対策でもあった。
 温暖化の10%はフードロスが原因ともいわれます。食べ物を捨てるのがもったいないだけでなく、地球を守るためにもトゥー・グッド・トゥー・ゴーを進めたかった。リッケさんの思いに多くの人が共鳴したということでしょう。

 残念ながらこのアプリ、日本では使えない。でも日本にもおなじようなアプリ「TABETE」があります。もう何年も前から使われていて、大手スーパーや有名なベーカリー・チェーン、それに廃棄物に悩む各地の自治体が参加している。サンジェルマンやリトルマーメイド、自治体では宇都宮市などの名前が目につきます。
 ただ、認知度も利用度もヨーロッパほどではないらしい。
 フードシェアリングサービスとも呼ばれるこのしくみ、日本ではもっぱら割安品を手に入れる手段とされているのかもしれない。一方ヨーロッパでは、食べ物をむだにしない、地球のために、という思いがより強いのでしょうか。
 そのへんのギャップがもうちょっと埋まるといいのだけれど。
(2024年12月20日)