ウェイモ党になろう。
トランプ政治の横暴にあいそをつかしたニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマンさんがこんなことをいっています。
ウェイモは、運転手のいない自動運転タクシー・システムのことで、ロボタクシーとも呼ばれる。貿易戦争なんかやめてこの無人タクシーを広げよう。それがアメリカ経済再生の方向だといいます(How I Describe Myself Politically These Days. By Thomas L. Friedman. April 23, 2025. The New York Times)。
無人タクシーなんてまだ実験段階と思ったら、とっくに実用化されているんですね。フリードマンさんはサンフランシスコに行くときはいつもウェイモを使って移動するそうです。
サンフランシスコだけでなく、ロサンゼルス、フェニックス、オースチンの4大都市でウェイモは実用化され、一般市民が使っている。4都市で1週間の利用数は20万回にというから、たいへんな成長産業です。これをもっと伸ばそうとフリードマンさんはいっている。

(Credit: Dllu, Openverse)
ほんとだろうか。タクシー程度でアメリカ経済が再生できるわけはないとぼくは思ってしまう。
ところが、米中関係、ことに電気自動車にくわしいフリードマンさんはちがいます。ロボタクシーにかんするかぎりアメリカは中国より進んでいる。しかもこれは次世代の巨大な成長産業の中心だ。ちょうど20世紀末の日本がガソリン自動車で世界を席巻したように、また21世紀初頭の中国が電気自動車で世界を席巻しているように、アメリカはロボタクシーで世界をリードする、そうしなければならないといいます。

なぜなら、ロボタクシーは先端工業技術のかたまりだから。
ロボタクシーは30台のカメラを備え、レーザーやレーダー電波を駆使し、常時周囲360度に注意を配る。それらすべてを制御するコンピュータには最先端のAIが組みこまれる。
アメリカ全土でこういうロボタクシーが走るようになれば、システム全体を支える膨大な雇用が創出されます。車本体だけでなく、搭載するAIの開発、集積回路の製造や設計、システムや装備のデータ収集や維持管理など、どの仕事もいまのタクシー運転手よりずっと高収入になる。こういう産業を作り出すのが、共和党でも民主党でもないウェイモ党、アメリカのとるべき戦略だとフリードマンさんは主張します。
けれどトランプ政権は、高関税で貿易戦争に突き進むだけ。温暖化を否定し、電気自動車なんかには目もくれない。ロボタクシーはいまは国内で製造できているけれど、国の戦略がなければいずれアメリカでは作れなくなるでしょう。かといって中国からの輸入もできなくなるかもしれない。
ウェイモ党の将来も、理性を欠いた政権のもとでは見通しが立ちません。
(2025年4月25日)