若者がデモに行かなくなった。なぜか。
ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トーマス・エドソルさんは、デジタルの波が若者の無力化を進めているとみます。ネットやSNSが、若者と社会のかかわりも変えてしまったのでしょうか(Why Aren’t the Kids Out Protesting Against Trump? By Thomas B. Edsall. April 14, 2026. The New York Times)。
法と民主主義を無視するトランプ政権に対し、アメリカではこの1年で3回、大規模な抗議行動がありました。「ノー・キング」(No Kings)というスローガンで、王はいらない、民主主義を取りもどそうと訴える市民数百万人が全国のデモに参加しました。
社会学者によれば、第1回の「ノー・キング」運動は去年6月に行われ、参加者の平均年齢は36歳でした。2回目の去年10月は44歳。ことし3月の3回目は48歳でした。参加者は高齢化し、若者が少なくなっている。

(去年6月、ミネソタ州。Credit: Chad Davis, Openverse)
若者がトランプ支持になったわけではない。
2026年のイエール大学の調査では、トランプを支持しない人は57%だったけれど、18から22歳の若者層では68%、23から29歳では72%にもなる。
若者はトランプを支持しない。けれどデモにも来ない。
背景にあるのは、若者のアパシー、虚無感だとエドソルさんはいいます。
「強力なデジタルの力が、私たちの集中力と粘り強い認知力をそぎ取っている。私たちはAIが近い将来、政治経済、社会を変えると心配するが、真に恐れるべきはデジタルの波が人びとのものごとへの執着や興味、関心を弱めていることだ」

ニューヨーク大学のジョナサン・ハイト教授はいいます。
「ショート動画を毎日見つづけてきた子どもや若者は、何かの目標に向け、意識してものごとをなしとげる実行力が撹乱されてしまう」
政治行動にもそれが反映される。
ソーシャルメディアは若者世代のうつや不安、自傷傾向を強めると、かねてハイト教授は警告してきました。影響はとくにリベラルな女性に強くあらわれるから、ソーシャルメディアのネガティブな影響は共和党より民主党に不利に働く。
「デモに行かない若者」は、際限のないスマホ画面のスクロールによって若者の無感動、無関心が強まった結果なのでしょうか。
この見方がどこまで正鵠を射ているかわからない。けれどもしそうだとすれば、アメリカ民主主義のほんとうの危機はトランプ政治というより、デジタルの波がもたらしたものということになるのかもしれません。
(2026年4月20日)
