かつて自由世界のリーダーはアメリカだった。
いまそれはウクライナだと、コラムニストのデビッド・フレンチさんがいっています。ちょっと持ちあげすぎだと思うけれど、ときにはこういう清新な議論も聞きたい(Meet the New Leader of the Free World. By David French. April 26, 2026. The New York Times)。

フレンチさんは、ウクライナをめぐる力学が変わったといいます。
元オーストラリア軍少将のミック・ライアン氏は、もっとも信頼できるウクライナ情勢の分析家だけれど、ウクライナの東部戦線が全体的に「安定化」したと書いている。膠着状態になったということでしょう。ロシア軍はもう前に進めないでいる。
別の分析家は、「キーウはアメリカをあきらめた」と書いた。ウクライナは、アメリカなしでも戦う、そうできるようになったというのでしょう。
背景には、アメリカが主導してきた西側安全保障体制の崩壊があります。
トランプ政権はウクライナを蔑視し、NATOからの脱退に言及する。ヨーロッパの軍事力を張り子の虎とばかにし、グリーンランドへの軍事侵攻すらちらつかせる。勝手にイランと戦争をはじめ、ホルムズ海峡が封鎖されてこまると同盟国が参戦しないと怒る。これでは同盟関係など維持できるはずがない。

イラクでの戦争に従軍した経験をふまえて、フレンチさんはいいます。
4年前の2月、ロシアがウクライナに攻めこんだとき、ゼレンスキー大統領は宣言した。
自分は逃げない、キーウにとどまる、ウクライナを守る。
その1年後、ウクライナを訪れたフレンチさんに前線の兵士たちはいいました。ゼレンスキーの言葉が自分たちには電撃のように響いた。あの瞬間、自分たちは降伏しない、戦うとわかったのだった。

ゼレンスキー大統領の決断はウクライナの歴史を変え、世界に衝撃を与えた。
一方、2年前の11月にはトランプ大統領が2期目の当選をはたしている。ヨーロッパは、アメリカとの同盟関係は長期にわたりそこなわれるが、それはトランプ個人だけでなく多くのアメリカ人の意志でもあると受けとった。
フレンチさんはいいます。
自由世界のリーダーとしてのアメリカの役割は急速に失われている。私の人生ではじめて、自由な民主主義世界を守る中心はワシントンではなくなった。それはロンドンでも、パリ、ベルリン、オタワでもない。キーウだ。勇気あるリーダー、勇気ある国民が、アメリカが捨ててしまったタイマツを掲げている。
自由と民主主義というタイマツを。
(2026年4月29日)
