キノコの棺桶

 オーストラリアではじめて、「キノコの棺桶」を使った埋葬が行われました。
 もちろん土葬です。遺体は棺桶とともに土中で微生物によって分解され、自然にかえる。土葬のなかでも、キノコの棺桶を使った埋葬は自然に与えるダメージがもっとも少ないのではないか(Woman laid to rest in coffin made from mushrooms in Australian first. 6 Sep 2026. The Guardian)。

 キノコの棺桶で埋葬されたのは、ニューサウスウェールズ州のキャロラインさんという70代の女性でした。夫のドナルドさんは妻の意向を尊重したといいます。
「彼女はいつもだれかを助けていた。死んだあとも、自然にかえればだれかの助けになると思えるだろう」 

キノコの棺桶(ループバイオテク社サイトより)

 埋葬に使われたのは、オランダのループバイオテク社の製品でした。
 キノコといっても、正確には菌糸体というキノコの根の部分と、ヘンプというアサ科の植物繊維でできている。棺桶の骨格をヘンプで作り、これにキノコの菌糸を絡ませると菌糸が成長して1週間ほどで棺桶の完成品ができます。
 棺桶ひとつが、30キロもの重さになる。

 このなかに遺体を入れて土中に埋葬すると、棺桶は45日で分解され土にもどります。一般的な木の棺桶は分解に50年かかるというから、土にかえるという意味ではキノコのほうがずっとすぐれています。
 キノコの棺桶は、すでにヨーロッパやアメリカで数千例の埋葬に使われました。オーストラリアでも引き合いは多かったけれど、重いので輸送上の問題がありこれまで輸入できなかった。技術的な問題がクリアされたので、これからオーストラリアでもキノコの棺桶が増えるでしょう。

 メルボルン大学の文化人類学者ハンナ・グールド博士は、環境と調和する葬儀への関心は高まっているといいます。
「宗教的な考えが希薄になり、エコな葬儀が行われるようになった。死んだら天に昇っていくのではなく、土にもどるという考え方が広がっているのでしょう」

 ループバイオテク社のヘンドリックさんは、キノコの棺桶は環境負荷が少ないだけではないといいます。
「自然にかえるだけでなく、自然を豊かにしているということでもあるんです」
 火葬が100キロ以上の炭酸ガスを発生するのにくらべ、一般的な土葬の炭酸ガスは10分の1です。キノコの棺桶ならさらに環境負荷は減るし、土に栄養分を与えることもできる。
 うらやましい。
 日本も、むかしのように土葬を認めてはくれないものでしょうか。
(2026年9月9日)