GLP-1という薬が広範な社会変動を起こしていると、このブログで何度も書きました(2025年2月5日ほか)。
もともと糖尿病の治療薬だったのが、使うと体重が減る“やせ薬”として爆発的に広がっています。アメリカでは使用者が1割を超え、“少食化”でスーパーの食品パッケージが小型化されるなど影響はあまねく及んでいる。
ブライダル産業も例外ではありません(‘Please don’t lose another pound!’: Ozempic is upending the wedding dress industry. 15 Jul 2026. The Guardian)。
結婚式をテーマにするウェブサイト「ゾラ」によれば、結婚予定カップルの10%がすでに“やせ薬”GLP-1を使っている。42%が「興味を持っている」と答えています。
少なからぬ花嫁が、結婚式当日までに体重を減らしている。

(Credit: By d, Openverse)
花嫁衣装のメーカーにとって、これは重大な問題です。
年間200万着作る大手メーカーだったら、顧客が急にサイズを変えてもどうにか対応できる。けれど中小のデザイナー、メーカーには死活問題です。花嫁衣装はほかの服とちがって製作にはとても手間と日数がかかり、かんたんな変更はできない。縫製をはじめてから「サイズを変えて」といわれても対応できません。
花嫁衣装の多くは500ドルから2000ドルの範囲です。そのサイズ直しを頼んだら、場合によって1500ドルもかかる。そもそも3サイズ以上変わったらサイズ直しはできないともされている。だから花嫁はできるだけサイズが変わらないよう体型を保ったほうがいい。
むかしだったらこれは「太らないほうがいい」という意味のはずでしたが、いまは「やせすぎるな」という意味になっている。
それほどまでに、花嫁はやせるようになった。かんたんに。

ところが、急にやせるとこんどは肌がたるんで見えるといった副作用も出てきます。そこで頼りにされるのが美容整形医だとか。背中や胸のたるみを「微修正」する。やせ薬と美容整形は共存共栄、日常化がさらに広がっています。
すべては、よりよい容姿のために。
なんでそんなにまでしてやせるのかと、首を傾げるのは古い世代でしょう。
ぼくは、この記事がガーディアンというイギリスの新聞に出たところに意味があるような気がしています。「やせ薬」を「花嫁衣装」で論じる。アメリカの新聞にはないセンスに、イギリス特有のユーモアがありはしないか。花嫁さんたいへんだね、ご苦労さん、というようでいて、ふふふと微妙に笑っています。
(2026年7月22日)
