範とすべきです。
南米の小国、ウルグアイ。
知りませんでした。この国が風力や太陽光などの再生可能エネルギーで世界のトップだとは。どうしてこんな先進の革命が可能だったか、環境問題を追う作家のノア・シャノンさんが長文のレポートを載せています(What Does Sustainable Living Look Like? Maybe Like Uruguay. By Noah Gallagher Shannon. Oct. 5, 2022. The New York Times)。
かつてウルグアイは石油に頼っていました。2008年、エネルギー担当相にラモン・メンデスさんが就任し、改革がはじまります。多くの人が原子力発電を想定したのに対し、メンデスさんは物理学者であったにもかかわらず、いやそのためでしょうか、原発は「一時しのぎ」にすぎないと考えました。
「エネルギーはそれだけを考えればいいわけではない。物理的、社会的、地政学的な面も考えなければならない」
ウルグアイは国土の多くが広大な草原です。この空間が、風力や太陽光の大規模な再生可能エネルギーを生みだす舞台になる。メンデスさんは2020年までに発電による炭素排出をゼロにするという、大胆な目標を掲げました。
ちょうどこのときに就任したのが、清貧でその名を知られるホセ・ムヒカ大統領です。歴史的な2012年の国連演説で、大統領は成長一本槍の西欧文化を根源から批判しました(このブログでも書いています=2021年8月9日)。
「われわれは経済成長のために生まれてきたのではない。幸せになるために生まれてきた。貧困はものがないことではなく、多くを持ちながらもっとほしいと思うことだ」
西欧の物質文明を批判したムヒカ大統領。エネルギーを広い視野で捉えたメンデス担当相。この2人のもとで、ウルグアイは2016年までにバイオマスや太陽光、風力で総電量の98%をまかなうようになり、世界でもっともクリーンなエネルギー社会になりました。
「グリーン革命」が進むにしたがい、ウルグアイ社会も変わります。ガソリン車から電気自動車へ、自家用車からバスへ、洗濯物は乾燥機をつかわずに風で干す。
太陽光や風力の発電は、天候に左右され不安定です。それを安定化するには、蓄電設備に巨額の投資が必要といわれますが、ウルグアイはそんなことはしない。「使いたいだけ電気を増やす」より、節電や夜間電力の活用など「発電量に合わせた暮らし」を考えるのだといいます。
どうして日本ではこういうことが可能にならないのだろう。考えてもむだだけど、やっぱり考えてしまいます。
(2022年10月11日)