ガスコンロは危ない

 これはいけないんだろうと漠然と思いつつ、あらためてハッキリいわれて愕然とします。ガスコンロを使ってはいけない、というのです。温暖化をを進め、有害ガスをまき散らす。こんなものは禁止しようという動きがアメリカで起きています。ガスをやめて電気にしろというのですね。
 ガスを使っている身としては肩身が狭い。

 発端はアメリカの消費者安全委員会でした。
 1月9日、委員会のリチャード・トラムカ委員がブルームバーグ通信社のインタビューに答え、将来ガスコンロを禁止したいと述べたのです。
 ガスコンロは天然ガスを燃やすので、石油を燃やすのとおなじように地球温暖化を進める。二酸化炭素のほか有害なガスや物質も放出するし、乳幼児の喘息の原因にもなる。いいことは何もないから禁止したいといいました(January 10, 2023, The Washington Post)。

 アメリカではすでにロサンゼルスやシアトルなど、一部の都市でガスコンロの規制がはじまっています。新しく建てる家はガスではなく電気コンロにしなければならない。また州レベルでもニューヨーク州ではガス器具禁止への動きがはじまっています。だから連邦政府のレベルでも、そうした動きが出てくるのは当然でしょう。

 なるほど。ぼくの家は数年前に工事をしたとき、考えることもなくガスコンロにしました。電気を使ったら原発が復活するんじゃないかなど、よけいなことも考えて。そういう発想はもう古いんですね。サステナブルに電気をつくり、その電気を使って化石燃料を使わないようにしなきゃいけない。

 でもアメリカの、ことに環境保護や温暖化に否定的な保守は猛反対です。
“ガス禁止インタビュー”が出た翌日、ただちに業界、政治家の反撃がはじまりました(Ban Gas Stoves? Just the Idea Gets Some in Washington Boiling. January 11, 2023, The New York Times)。

 怒り狂った共和党議員のひとりは、「消費者安全委員会の監査をはじめる」といい、石炭産業を基盤とする議員は「大混乱だ。連邦政府は国民がどう料理するかなんて押し付けるべきではない」と、規制なんかありえないという姿勢です。石油産業の団体からは「ガスコンロはビューティフル」という声さえ出てきました。地球環境より目の前の経済が大事な人たちです。

 アメリカの保守がそういうのであれば、よけいにガスコンロをやめなければいけない。そうは思うけれど、いっぺん設置してしまったものを取り替えるのは容易ではありません。罪悪感はだんだん強まるけれど、ぼくは当分ガスで料理し、ガスで湯を沸かしてシャワーを使うしかありません。
(2023年1月12日)