ゴキブリの力

 ゴキブリがインドを動かしている。
 若者を中心に結成されたインドの反体制運動、「ゴキブリ人民党」についてはこのブログでも書きました(5月25日)。政権批判の動きは広がり、先月は政府の教育相が辞任、今度は議会の補選で与党候補が落選しています。インドの若者たちが社会を変えているのでしょうか(India’s ruling BJP loses byelection in stronghold after Cockroach student protests. 4 Aug 2026. The Guardian)。

 インド東部、ビハール州パトナ市は30年にわたり与党インド人民党の強固な地盤でした。ここで行われた今回の国政選挙補選で、野党ジャンスラージ(良き統治)党のプラシャント・キショール候補が勝つ番狂わせが起きています。
 インドでは5月、最高裁判所の長官が働かない若者をゴキブリになぞらえ、これに反発した若者たちが「ゴキブリ人民党」を結成しました。おれたちゃゴキブリ、怠惰でネット中毒、そういうおれたちが政治を変えるぜと。
 若者の反乱はネットを介して広がり、たちまちフォロワー2600万人の政治、社会運動に広がりました。

ゴキブリ人民党サイトの画像

 ゴキブリ人民党の不満は政府の腐敗に向けられ、先月は入試問題の不正で教育相が辞任せざるをえなくなりました。これにつづく補選での敗北は、盤石に見えたモディ政権が揺らいでいるかの印象を与えます。
 とはいえ、今回の補選ではゴキブリ人民党が勝ったわけではありません。ゴキブリ人民党は候補者を立ててもいない。若者たちはゴキブリ人民党をとおして、結果的に野党候補を押しあげたにすぎない。しかしキショール候補の支持者は、「政治の腐敗や失業問題を中心とする若者たちの声に答えたことが、勝利につながった」といっている。

ニューデリー市街(資料映像)

 政治専門家のアジョイ・ボーズさんは、補選の結果は政権にとって、たんに一選挙区での敗北にとどまらない影響を与えるといいます。
「学生たちの抗議のあとでこういうことが起きたのは、政権与党にはかなりまずい見通しになる。抗議が敗北を招いたとはいわないが、ビハール州は学生運動の強いところだったから、多くの選挙民がそれに影響されたのだろう」
 ゴキブリ人民党がんばれといいたいけれど、ことはそれほどかんたんではない。
 パロティとネットと若者の熱気が、どれだけ社会を動かすかはまだ未知数です。
 インドは人口の3分の2が35歳以下で、日本とはちがう若者国家。その若者が失業や腐敗に「もうがまんできない」と声をあげているからには、きっと何かが起きるでしょう。ぼくは期待しています。
(2026年8月5日)