幇助(ほうじょ)死はヨーロッパが先進の地と思っていたら、いつのまにかカナダのケベック州が世界最先端になっていました。
ケベックではなにが起きているのしょうか(How Quebec, in a Decade, Came to Lead the World in Assisted Dying. June 15, 2026. The New York Times)。
幇助死の率がもっとも高いケベック州ラノディエール市で、2017年以来662人の幇助死を扱ってきたルイ・ダイグル医師はいいます。
「多くの人が尊厳ある死を選択している。いまはだれもが、理想的な死に方は2つあると考えているのではないか。突然死か、幇助死か」

幇助死は、終末期の病気で回復の見込みがない人にとって、長い苦痛の死を死ぬのにくらべればはるかにいい「尊厳ある死に方」ではないか。
カナダの人びとはそう考え、2016年にMAID法、医療幇助死を合法化する法律を作りました。いまカナダでは、亡くなる人の5%が幇助死です。
ケベック州では8%、ラノディエール市では13%です。
幇助死が増えた理由のひとつは、カナダの医師や看護師が直接、幇助死を望む人に致死性薬剤を投与できるからでしょう。致死性薬剤を摂取できるのは本人だけと決めている国では、幇助死の率が下がります。
またオーストラリアやアメリカでは、幇助死について医師は提案できません。カナダでは医師が提案したり説明したりできるので、これが幇助死増加につながっている。カナダは、ほかの国にくらべ幇助死がしやすくなっているのです。

とはいえ、最大の要因はカナダ国民の多くが人生最期の無用な苦痛を避けたい、尊厳ある安静な死を迎えたいと考えるようになったことでしょう。
とくにフランス語圏のケベック州は、かつてカトリック教会が市民生活のすべてを指導していたので、本来なら幇助死には絶対反対です。それが1960年代の「静かな革命」といわれる社会変動で、多くの市民が教会から離れていった。1世代が経過し、ケベックははるかにリベラルな地となりました。だから幇助死が日常に入りこめたということでしょう。
それにしても、幇助死13%ってすごい。
幇助死が許されていない日本では、死ぬ人の13%が死のまぎわに長期間、耐えがたい苦痛にさいなまれ、「長い死を死なされている」ということでしょうか。
早く死なせてくれと訴えながら、かなえてもらえなかった人びとを思います。
自分の最期はカナダで迎えたいものだと思わずにはいられません。
(2026年7月1日)
