イスラエルのガザ侵攻への抗議が、欧米の各地で起きています。アメリカの大学では警官隊が導入され何百人もの学生が拘束されました。60年代の反戦運動の騒然たる空気を思い出します。
学生たちを支持する論もあれば、切って捨てる保守派もいる。何をどう見るべきか戸惑っていたところで、ニューヨーク・タイムズのトーマス・フリードマンさんの論考を読み、落ち着きました。「二つの先住民の二つの国」という解決策しかないと(Why the Campus Protests Are So Troubling. By Thomas L. Friedman. May 8, 2024. The New York Times)。
フリードマンさんの論を、ぼくなりに要約するとこうなります。
・・・各地の大学で起きているガザ支援の行動は、全体としてかなり問題がある。学生たちは今回の紛争がなぜはじまったか、解決のためにどうすればいいか考えていないのではないか。
私は長年ベイルートとエルサレムに居住し、実情を熟知したうえで主張しつづけてきた。この紛争の唯一の解決策は、二つの先住民の二つの国を作ることだ・・・
ユダヤ人のイスラエル国と、アラブ人のパレスチナ国、この2国の平和共存でしか問題は解決できない(アメリカがパレスチナ国を承認しないので、問題は問題のままだけれど)。
・・・今回の紛争の発端は、ハマスが突然イスラエルを襲い、イスラエル市民を無差別に殺戮し人質を取ったことだった。そのことを学生たちは無視しているのではないか。一方イスラエルの反撃も、ハマス殲滅といいながらパレスチナ市民の過剰で無差別な殺戮になっている。私は、ネタニヤフ政権もハマスもどちらも支持しない・・・
このようにいったあとで、フリードマンさんは大事な本論を展開します。
もしもアメリカの学生が抗議行動を起こすなら、過激派ハマスではなくパレスチナ人多数派の声を聞くべきだ。
・・・ガザ市民はハマスに対して怒っている。イスラエルを破壊しようとする無謀な行為に、その結果がどうなるか考えもせずに走ったことに、怒っている・・・
怒りの声を、たとえばガザで育ったパレスチナ系アメリカ人、アーメド・フアド・アルハティブさんから聞くことができる。アブダビの新聞「ザ・ナショナル」に載った彼の寄稿のタイトルは、「イスラエルの戦争で私の家族は31人殺された、それでも私はハマスに反対する」だった。
アルハティブさんは、ますます多くの市民が過激派ハマスの強権的な支配にノーというようになったといいます。パレスチナ市民は、「私たちは生きたい」と書いた横断幕とともに街頭に出るようになった。そうした民衆の離反に追いつめられたハマスが暴発し、10月、イスラエルを襲ったということだったのではないか。
そういうハマスを支持するのかと、フリードマンさんは学生たちに問いかけている。
それはまた、あなたはそういう学生たちを支持するのかという問いかけでもある。
(2024年5月10日)