まず友情、事実はあとで。
親しい友人や家族の誰かが、選挙で不正があったというような「フェイク」を信じていたらどうするか。頭から否定するのではなく、どうすればその人のフトコロに入っていけるかでしょう。ネットのフェイク情報を研究する6人の専門家のインタビューをまとめてアドバイスにした記事があり、なかなか参考になります(9 tips to debunk false claims made by friends and family. October 5, 2022, The Washington Post)。
大事なのは共感的であること。フェイクを信じている人のいうことを聞き、どんな気がかりがあるかを知ろうとする。そういう基本を踏まえ、ほんとにその人の考え方を変えたいと思ったらどうするのがいいか。
アドバイスその1が、まず友情です。
専門家によれば、フェイクを信じている人には、それが事実かどうかは問題ではない。だから事実ではないと指摘してもむだです。とにかく話をしてその人の気持ちをつかもうとする。「頭ではなく、こころに向けて」話しかけることが肝心です。
その2。感情的にならない。
フェイクの多くが、感情に訴えることによって広がります。いまの日本だったら「生活保護受けるやつはズルい」という言い方がかんたんに拡散する。まじめに働くと損するという「くやしさ」の情を引き起こすからでしょう。そういう感情のメカニズムに引きこまれないように話をする。ズルい人はごく一部で、大部分は働きたくても働けない人たちだ、それはこれこれこういう事情で、というふうに。
その3。短いメッセージを。
長いメールでとうとうと正論を述べても相手は聞かない。それより、自分が信頼するメディアの情報源を提示するくらいにとどめる。疲れないようにやり取りする。
などなど、いろいろなくふうがあります。でもいったんフェイクを信じた人の考えを変えさせるのはとてもむずかしい。一回話し合ったくらいでは変わらないのが当たり前です。何度も共感とともに話しあう必要があるでしょう。誰でもフェイクには弱い。自分もまちがえるし、自分のいっていることがほんとに正しいかどうかもわからない。でもこうなんじゃないか、ああなんじゃないかと話をつづけるうちに、もしかしたらお互いによりよい理解にたどりつけるかもしれない。フェイクに対処するのは時間がかかる、そしてとてもストレスの多い作業です。
できることならそんなしんどい作業にかかわりたくはない。でも無関係にすごすことももうできない時代です。いや、いつの時代も世はフェイクに満ちていたのかもしれませんが。
(2022年10月28日)