地域で作る電気

 太陽光発電は、しばらく前までは希望のエネルギーでした。
 ところが最近、微妙に変わっている。ソーラーパネルが日本の各地でさまざまなトラブルになっていると聞くようになりました。ソーラー、ヤバそう。
 ところが、イギリスはまったくちがうらしい。どうしてこんなにちがうのか(‘A share in the delight’: the people investing in the UK’s first community-owned solar battery. 8 May 2026. The Guardian)。

 ガーディアン紙が取りあげたのは、イギリス南部、オックスフォードシャー州にあるレイ・バレー・ソーラーとよばれる太陽光発電です。

「レイ・バレー・ソーラー」
(英オックスフォードシャー州, Credit: Low Carbon Hub., Openverse)

 3万6千枚のソーラー・パネルで7千世帯分の電力を供給する、イギリスでも最大級の地域発電事業のひとつですが、今回ニュースになったのは、ここが全国ではじめて蓄電設備となるバッテリーの設置をめざしたことでした。
 バッテリーがあれば、住民は夜間も太陽光発電で暮らせる。リチウム・バッテリーは高価だけれど、15年は使えるので長期的に電気料金は安くなります。そのうえ、太陽光による再生可能エネルギーへの転換は、気候危機への対策でもある。

 レイ・バレー・ソーラーは基本的に住民の「投資」で成り立っています。企業や地主の金もうけではない。税金や寄付でもない。クリーンな電気を自分たちで作ろうと地域住民が投資している。ここが、日本とは決定的にちがうようです。

レイ・バレー・ソーラーを設立したバーバラ・ハモンドさん
(事業主体「Low Carbon Hub」のサイトから)

 レイ・バレー・ソーラーには地域住民2千人が合計300万ポンド、約6億円を投資したと、リーダーのバーバラ・ハモンドさんはいいます。
 こんど進める新しいバッテリーの事業でも2億円前後を集めたいといい、出資者には5%の配当を予定している。イラン戦争による石油危機のおかげで、太陽光発電への投資意欲はさらに強まっています。
 オックスフォードシャー州の太陽光発電は、地域住民の支持と理解、そして資金によって実現しているということでしょう。

 地域のトラブルが前景化する日本と、気候対策に住民が投資するイギリス。
 ここには、「自治」というものをめぐる日英社会のへだたりがあります。
 エネルギーは国が解決すべき問題とみてしまう日本と、それは地域の問題であり自分たちで解決したいと考えるイギリス。オックスフォードシャーの太陽光発電からは、そんなことが見えてきます。
 イラン戦争はクリーン・エネルギー転換への好機だというのに、ぼくの周囲ではそんな言説がほとんど聞かれない。これでいいのかと、五月晴れのもとでいささかの憂いをおぼえます。
(2026年5月11日)