猫に鈴を

 野生動物を守ろう。猫から。
 こんな動きがオーストラリアやニュージーランドで進んでいます。
 そういえば沖縄では、猫がヤンバルクイナを絶滅させるとかの論争がありました。似たようなもんかと思ったら、もっと規模が大きく深刻です。猫を家から出すな、「外出禁止令」を、なんて議論まで出てきました(Can Australia curb its killer cats? March 12, 2023, BBC)。

 猫が鳥を殺すとか、獲物を家に持ち帰る話はよく聞きます。ぼくも去年、自宅の庭先で近所の猫が鳩を殺すのを目撃しました。猫は死んだ鳩をくわえて逃げ、後に点々と血痕が残っていました。

猫が鳩を襲った跡(2022年、自宅庭)

 そういう話を聞くと、愛猫家はみんないいます。猫ってそういうもんだ。
 でも数字を見ると愕然とします。オーストラリアでは、全国にいる飼い猫は推定800万匹だけれど、1匹が1年間に鳥やネズミ、蛇など180もの野生生物を殺すから、全国で猫に殺される野生生物の数は年間20億にもなる。
 動物保護団体、ISC(Invasive Species Council)の活動家はいいます。
「みんないうんだよね、うちの猫は動物を殺したりしないって。それ、猫が殺した獲物の15%しか持ち帰らないからなんだ」

 ネズミを殺すくらいだったらまだいいけれど、そんなもんじゃないとオーストラリア国立大学のサラー・レッグ教授はいいます。白人の入植がはじまって以来、オーストラリアで絶滅した33種の哺乳類のうち、3分の2は猫が原因だったとか。
「これだけの率で種の絶滅が起きたことはない。いまなお猫の害によって哺乳類は減少しているんです」
 こら、猫、わかってんのか?

 放し飼いがよくないということは、愛猫家もだんだんとわかってきた。そこで対策として、飼い猫はすべて登録制にするとか、マイクロチップを埋め込む、外出禁止にするなどの策が議論され、一部は実行されるまでになっています。オーストラリアではいまや猫の30%が家のなかで飼われるようになりました。そういう猫のために、パティオならぬキャティオ(catio)を作る家も増えている。

 ニューサウスウェールズに住む愛猫家、ファーザーさんはいいます。
「家のなかで飼うのがいいと思う。そんなことすると猫はちょっと猫らしくなくなるけど、自然を守るためにはしかたがない」
 猫は鳥やネズミを殺す。でも、「そういうもんだ」ではすまされない世の中になったのです。

 日本ではむかし猫によく鈴を付けました。あれ、ただの飾りじゃなくてけっこう深い意味があったんじゃないでしょうか。
(2023年3月14日)