結婚尊重法

 ことし7月、アメリカは連邦議会下院が同性婚を認める「結婚尊重法案」を可決したとこのブログに書きました(7月25日)。
 こんどは上院が先週この法案を可決し、アメリカは国レベルで同性婚を合法化する見通しとなりました。合法化に反対の強かった共和党からも賛成者が現れ、法案は62対37という大差で可決されています。同性婚合法化の流れは止まらないでしょう(Senate advances bill to protect same-sex marriage in federal law. November 16, 2022, The Washington Post)。

 ただし反対も根強く、法案には一定の条件のもとで宗教団体などが同性婚を拒否できると、若干の修正が加えられました。これはもしもどこかの教会で牧師が同性カップルの結婚式は認めないというなら、そういう主張は違法とはしないということです。ただし自治体や州など、公的機関は同性婚も異性婚も平等に扱わなければならない。
 一部修正された法案はふたたび下院に回り、ここで再可決された後に大統領が署名して成立します。

 アメリカでは同性婚を認める州が多く、だいぶ以前から同性婚は事実上“公認”になっていました。議員のなかにはこんな法律、あらためてつくらなくていいという意見もあったようです。でも推進派は、同性婚を覆う「暗い雲」を消すために必要だと主張していました。それはことし最高裁判所が中絶の非合法化を決めたのにつづき、超保守派の判事が同性婚や避妊まで問題にしはじめたためです。あまりに時代おくれの司法に対し、立法府の意思を明確にするという意味の「結婚尊重法」です。

 こういう動きを見るにつれ、日本は遅れているという耳タコの言い方になってしまいます。でもいまはそこに、旧統一教会というカルトの影がさしているから不気味です。
 旧統一教会が同性愛や性同一性障害は「心理的障害」などといって、病気であるかのように攻撃しているのは周知の事実です。しかもそれを「勉強会」などの形で自民党に吹き込んできました(11月8日毎日新聞)。こういう“とんでもカルト”の集票力に影響され、自民党政権が同性婚への偏見を深めているのだとすれば、アメリカの保守派よりもっとレベルの低い話ではないでしょうか。同性愛は子どもをつくらないので「生産的じゃない」なんて妄言を吐く国会議員も、そういうところから現われます。もっともこちらは神社本庁の影響かもしれないけれど。

 日本LGBTサポート協会のサイトによれば、日本でも地方レベルではすでに130を超える自治体が事実上の同性婚を認める「パートナーシップ宣誓制度」を採用しています。進歩がないわけではありません。でもそういう地方レベルの動きが国政に達するまでには、まだまだ時間がかかるでしょう。
(2022年11月18日)