大量殺人が起きると、すぐに精神病のせいだという人がいる。
そうじゃない、とコラムニストのブライアン・ブルームさんがいっています。「そうだったのかあー」とつぶやいてしまう刺激的な論点がありました( The Colorado massacre cannot be blamed on mental illness. It’s rooted in hate. By Brian Broome. November 21, 2022, The Washington Post)。
ブルームさんは、先週コロラド州で起きた銃乱射事件について書いています。週末のクラブを22歳の男が襲い銃を乱射、5人が死亡、十数人が負傷しました。襲われたのは“LGBTQクラブ”で、LGBTQの人びとをねらったヘイト犯罪と見られています。
ゲイやレズビアン、トランスジェンダーなどの人びとが集まる場所は、これまでにもくり返し襲撃され、多くの犠牲者が出ています。犯人はだいたいがホモ嫌い(ホモフォビア)でマッチョ系の白人男性でした。
そういう事件が起きると「メンタルのおかしいやつがやった」となるけれど、そうじゃないとブルームさんはいいます。大量殺人を起こす社会風土があるからだ。自分とはちがう人びとを、少数派を敵視し、嫌悪して消し去ろうとする多数派が、悪夢のような乱射事件をくり返している。そう指摘しつつ、こういっています。
・・・私はクラブやバーにはもう行かないが、若いころは、クイア(LGBTQ)の場所が救いの綱だった。バーというより、この世界のすべての判定から逃れるシェルターだった。私は地獄に落ちないようにしろといわれ、“本物の男”になれといわれ、社会が決めたように生きろといわれ、そのふりをしてきた。クイアだけが自由を感じられる場所だった。人は誰もそういう場所がいる。異性愛の人たちにとっては全世界が、すべての公園や公共の場所、町もレストランも自由の場所だ。だがLGBTQは自分でそういう場所を見つけなければならない。いや、つくらなければならない。それさえも、今回のような襲撃事件でさらに少なくなってしまう・・・
ぼくが強くひかれたのは、LGBTQの人びとの集まる場所が「すべての判定から逃れるシェルターだった」というところです。
黒人で男(だと思います、写真から見て)のブルームさんは、白人文化のなかで抑圧されつづけてきた。お前はこうでなければいけない、という社会の強い圧力にさらされてきた。その息苦しさから逃れる場所として、LGBTQのコミュニティがあったということでしょう。その感覚はひどく切実なものです。
LGBTQクラブは、ただ“同好の士”が集まる場所ではなかった。
人が世界の判定から逃れる場所、お前はこうでなければならないという鎖をふりほどく場所。そういう場所としてLGBTQクラブはあったのだと、はじめて知りました。
(2022年11月23日)