医療的ケア児の写真展に行ってきました。
呼吸器を付けたバギーや電動車椅子、ストレッチャーに乗った子どもたちと家族、ケアする人びとの笑顔を捉えた写真がたくさん並んでいました。こんなふうにみんな町のなかに出てくるようになったんだと感慨を覚えるとともに、だからこそ、社会のさまざまなバリアーも露呈してきたのだとわかります。
「イケア」とも呼ばれる医療的ケア児は、ほとんどが生まれてからNICU(新生児ICU)で過ごし、退院後も人工呼吸器や胃ろうなどの医療的ケアを必要とします。起居、移動だけでなく、食事や入浴、排泄なども介護が必要なことがあり、いつ症状が急変するかわからない子もいる。
そういう“たいへんな”子どもたちの毎日が、横浜市役所1階のロビーに並んだ写真から浮びあがります。
写真展を開いたのはNPO法人、「レスパイト・ケアサービス萌(もえ)」、通称「萌」です。
萌は医療的ケア児のケアもするけれど、家族のケアにも重点を置いています。直接の支援だけでなく支援者の支援です。家族のレスパイト、息抜きも大事、「ご家族のほっと一息お手伝いします」といって。
これはきっと、萌で中心になっている中畝治子さんが、自分自身も重症心身障害児を育てた経験があるからでしょう。子どものケアをするだけではなく、親や家族のケアもする、それがどれほど大事か身をもって知っている。
ケアする人をケアする。応援する人を応援する。
これはケアやサポートを進めるときに必須の考え方ではないか。ぼくはそんなふうに見ます。
なぜなら、ケアをケアする人だけに任せるのは、強い丈夫なケア人を想定することになるから。あるいは、どこまでもへこたれることのない家族。
そんな想定は無理だし、非倫理的です。
努力するけれどへこたれるケア人、がんばるけれど限度がある家族。それが当り前でしょう。だから、そういう人が、家族が、孤立するのではなくみんなでケアする、分かち合い、支え合う。そういう支援を考え、目ざすべきではないか。それが「安心のケア」につながります。
むかしから北海道浦河町ではいわれています。
応援は質より量。しっかりした人がひとりでやってはいけない、力のない人がたくさんでした方がいい。
みんなでする応援。たくさんの人を、できれば地域までをも巻きこむ支援。
精神科と医療的ケア児の支援はちがうといわれるかもしれないけれど、ぼくのなかでは、レスパイト・サービス萌は浦河町の精神科と芯の部分でつながっています。
(2023年7月18日)